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テクノロジーの変曲点は
もはやビジネスの大きなリスクだ

――IBMリサーチのジョン・ケリー氏に聞く

大河原克行
【第175回】 2018年7月6日
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企業にとっても重要な技術の変曲点

 企業にとっても、ワトソンの法則による技術の変曲点の到来と、それを加速する量子コンピュータの影響をしっかりと推し量る必要がある。

 「企業の経営者は、ワトソンの法則と量子コンピータによってもたらされる大きな波が、すぐに訪れることに早く気がつくべきである。2、3年のうちに、ごく少数の人たちや、ごく少数の国が、量子コンピュータにアクセスすることができるようになるだろう。そのときに、企業競争のバランスさえも変えてしまうことになる」とし、「一部の企業のCEOやCIOは、いまの時点から、量子コンピュータを学ばなければ、生き残れないという危機感を持っている。いまは、研究開発段階であるが、2、3年後や実用段階になって動いては遅すぎることを理解している」とする。

 量子コンピュータは、2020年には実用化されるとの予測や、2022年には多くの大学で利用されるようになるという見通しも出ているが、その時点で動いては遅いというのが一部企業の経営者の共通理解になっている。

 IBMでは、IBM Q早期アクセス版商用量子コンピュータを活用する最初の顧客として、JPMorgan Chase、Daimler AG、サムスン、JSR、Barclays、日立金属、本田技術研究所、長瀬産業、慶應義塾大学、オークリッジ国立研究所、オックスフォード大学、メルボルン大学の12の企業、団体、学校が名乗りをあげたことを発表。IBM Q Networkとして、IBMと直接連携し、量子コンピューティングを進化させるほか、IBMのオープンソースの量子ソフトウェアと開発者ツールを活用して、エコシステムの拡大も進める。日本の企業や大学がここに名を連ねていることは、大きな意味があるだろう。

 「量子コンピュータの活用には、これまでとは違った準備が必要であり、そこには大変な労力と困難を伴う。だが、それを克服した指数関数的な進化に追随できることになる」とする。

 米IBMは、2018年3月に、米ラスベガスで年次イベント「THINK 2018」を開催し、2018年6月には、東京で「THINK JAPAN 2018」を開催した。

 この2つのイベントで基調講演を行ったケリー氏は、「テクノロジーが変曲点にあることや、その中心にあるのは、データであることには多くの人が気づいている」としながらも、「だが、それがどれぐらい大きなものになるのかといったことまでは理解していなかった。これらのイベントを通じて、多くの人が、その波の大きさを明確に認識するようになったのではないか」とする。

 THINK 2018では、初めて、「ワトソンの法則」という言葉が、米IBMのジニー・ロメッティ会長兼社長兼CEOによって使われた。そして、50Qビットの量子コンピュータの試作品も展示された。

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