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テクノロジーの変曲点は
もはやビジネスの大きなリスクだ

――IBMリサーチのジョン・ケリー氏に聞く

大河原克行
【第175回】 2018年7月6日
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大企業の利用に耐えるAIの条件

 これらの発言や展示とともに、もうひとつ注目されたのが、「エンタープライズAI」という言葉だった。

 ケリー氏は、「本当の意味で、エンタープライズAIという言葉を使える企業はIBMしかない」とする。

 「コンシューマ領域で活躍している企業の多くが提供しているのは、コンシューマAIであり、それは、単純なAIを活用したものに過ぎない。たとえば、音声認識によるボットを活用したり、画像認識によって個人を特定したり、これまでの嗜好をもとに、音楽のリクエストに応えるといったものがあげられる。しかし、エンタープライズAIは、とても複雑なものであり、より多くのデータを活用し、医療や銀行業務、石油取引といった各業界の規制やルールに従いながら判断し、ビジネスプロセスの変革や、エンタープライズビジネスにおける重要な判断を支援するものになる」と定義する。

 エンタープライズAIを実現するには、設計データや知財に関する情報など、企業が外部には公開していないデータを活用した顧客に特化したAIであること、複数のAIを使って、ひとつの解答を導き出すこと、そして、セキュリティやプライバシーにも配慮したものでなくてはいけないとする。

 「競合他社がエンタープライズAIという言葉を使ったとしても、それを正しく実行したり、実現したりすることは可能ではないと考えている。それは、基幹システムを100年間に渡って構築、運用してきたIBMの実績がベースとなり、エンタープライズユーザーが、その重要なデータをIBMに預けることに信頼してくれていること、他社に比べて、3~5年は先行しているAI技術を持っていること、IBMが、エンタープライズユーザーが求める機能や要素を知っており、AIを、プロセスのどこに使うべきか、といったことをしっかり把握しているという点に差があるからだ。この3つの要素のうち、1つか、2つを持っている企業があるかもしれないが、3つを揃えている企業はない。どれひとつが欠けても、エンタープライズAIを実現することはできない」とする。

 そして、「IBMは、企業が持つデータは企業がオーナーシップを持つこと、データから生まれたアルゴリズムも企業が持つべきであることを明確に示している。データやアルゴリズムを勝手に使ってビジネスにつなげることはない。長年にわたって、データに取り組んできたからこそ、IBMは、データ中心の世界で信頼され、企業を支援することができる」と胸を張る。

 データやAI、量子コンピュータという新たな技術や動きによって、新たな企業も数多く参入している。そうした動きを伴いながら、技術の大きな変曲点は、社会に様々な変化をもたらすことになるだろう。

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