なぜなら、私はその商談から、2つの大きなものを手に入れることができたからです。
1つは、その方から同僚の方々をご紹介いただけたことです。
しかも、20名も紹介していただいたのです。

その方は、「みなさんの今後の仕事の勉強のために、川田さんという方に必ず会ってみてください」というメールを、職場の人たちに送ってくださったのです。そして、その中から半数近い人がお客さまになってくださって、さらにその方々からも、たくさんのお知り合いの方をご紹介していただけました。

もう1つ手にすることができたのは、仕事に対する「自信」です。営業である以上、当然、迷うこともあります。自分を優先したくなることもあります。正直いうと、いつも、その葛藤を持って仕事をしているといっていいでしょう。だからこそ、こういう経験が自信になるのです。

お客さまを何よりも大切に考えることによって「次の成功」を生むことができた。この経験が、その後の営業活動における揺るぎない自信になります。

このときに限らず、私はお客さまに必ずこう言っています。 

「義理とかお付き合いでは、保険に入らないでください。お話を聞かせていただいて、本当に保険が必要ないと思ったら、私はいっさい提案をしません」

私は、お客さまといろいろなお話をしていく中で、その人に保険のニーズがあると感じたときに初めて、商品を紹介しています。必要のない人には商品を売らないこと。必要な人に必要なものだけを販売すること。そして、納得して、満足してもらうこと。

それが、私の実践している「レベル11」の1つです。

「電話の取り方」1つで印象は変わる

お客さまに契約書にサインをいただくときには、気持ちよくサインしていただけるように、男性用と女性用の2本のペンを用意しています。また、訪問先から帰るときは、お客さまの靴べらをお借りするのではなく、「マイ靴べら」を使って靴を履きます。営業は「訪問者」であって「お客さま」ではありません。お客さまのものはできるだけ使わないほうがいい。そう思っているからです。

このように、営業活動で私が心がけていることはいくつかありますが、日常的に意識しているのは、「電話の出方」です。

お客さまから電話をいただいたときに、あなたは最初に何と言っていますか?

「はい、◯◯社の川田です」
「はい、川田です」

そんなふうに、社名や部署と自分の名前、もしくは自分の名前を名乗るのが一般的ですよね。

でも、お客さまの番号を携帯電話に登録しておけば、誰からの電話なのかは、事前にわかっているはずです。だから、私はこう言っています。

はい、◯◯さん、川田です。お電話ありがとうございます」

第一声でお客さまに呼びかけて、その次に、自分の名前を言うのです。

私は、初めて会った人が、次に会ったときに、自分の名前をしっかりと覚えていてくれたら嬉しいです。自分がお客さまの立場のときは、なおさらです。「この人、ちゃんと自分のことを覚えていてくれるんだ」と、安心感や親近感を覚えるのです。

自分がしてもらったら嬉しいことは、お客さまにも積極的に実践していく。
私は、それが「レベル11」の基本だと思います。

私がトップセールスになることができたのは、このようにして「先味・中味・後味」のすべてのタイミングで「レベル11」を提供することを、常に意識して行動してきたからだと思っています。

偉そうなことを言っていますが、実をいうと、かばんの下にハンカチを敷くことも、マイ靴べらも、先輩がやっていたことのマネなんです。

「いい!」と思うことは、遠慮なく取り入れる。
私は、それも大事なことだと思います。
「学ぶ」という言葉の語源は「真似る」にあると言われますから。

本記事では私自身の心がけを紹介しましたが、拙著『だから、また行きたくなる。』では、こうした「ちょっとした工夫」で、私自身が心を動かされ、実際にたくさんのお客さまが集まっているお店やサービスを、一流ホテルから知られざる小さな飲食店まで、50以上、写真入りで紹介しています。

もっと仕事で成長したい。
もっと売上を伸ばしたい。
もっとお客さまに喜ばれるサービスをしたい。
もっといい会社にしたい。

もしあなたがそう願っているのなら、そのヒントを、本書の中に見つけていただくことができるはずです。