利用される「人生100年時代」ブーム

 もともと金融業界・運用業界にとって「老後のマネー不安」は、インフレのリスクと並んで、手数料の大きな運用商品を売り込むための有力な「二大商材」の一つだった。特に有効なのが、「老後のお金が不足するかもしれない」と不安をあおるマーケティング戦略だ。

 金融機関がこの戦略を使う上で好都合だったのは、ベストセラーとなった書籍であるリンダ・グラットン&アンドリュー・スコット著「LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略」(池村千秋訳、東洋経済新報社、2016年刊)をきっかけとして起こった「人生100年時代」ブームだ。ブームは今も続いており、内閣府には「人生100年時代構想会議」という名前の有識者会議まである。

「人生100年時代」という言葉を使うことによって、金融機関はトレンドに乗りつつ、顧客の人生の心配をしているような立ち位置から、老後不安をあおることができるのだ。彼らにとっては、何ともありがたい流行語だ。だからこそ、われわれ一般消費者は、この言葉を使ったビジネスアプローチを十分警戒する必要がある。

 さて、記事広告には、概ね次のようなことが書かれていた。

【某紙・「人生100年時代」の記事広告の概要】

●100歳以上の人口は顕著な増加傾向にあり、日本は長寿化している。平均寿命が延びるとリタイア後の期間が長くなる。

●日本の個人金融資産は現預金が多く、「資産寿命」(営業用の新造語か。老後資金がゼロになるまでの期間と定義している)を延ばす上で現預金の運用が課題だ。

●ある調査によると「ゆとりある老後生活」のために必要なお金は1月34.6万円だが、これはセカンドライフの最低日常生活費22.6万円と12万円の差がある。

●65歳時点から「平均的な貯蓄額と退職金額の合計である3500万円」から上記の差額1月12万円を取り崩すと、資産の運用利回りがゼロの場合、89歳でお金を使い果たす。