地下トンネルが導水管となって
水害は拡大していく

 首都圏においても、2009年1月に中央防災会議の専門調査会がとりまとめた「荒川堤防決壊時における地下鉄等の浸水被害想定」が発表されている。想定では、3日間に550ミリ以上の降雨によって荒川の岩淵水門付近で堤防が決壊し、東京都北区、荒川区、台東区、中央区など隅田川周辺に大規模な浸水が発生。堤防の決壊から10分後には地下鉄南北線赤羽岩淵駅、4時間後には千代田線町屋駅、6時間後には日比谷線入谷駅で浸水が始まり、地下トンネルを伝って都心に水が流れ込み、最大で17路線97駅、延長約147kmの線路が水没する可能性があるとしている。

 丸ノ内や大手町付近では地表に到達するよりも6時間ほど早く、トンネル経由で洪水が到達する。霞ケ関や赤坂、六本木では地表に洪水は到達しないが、駅と線路は水没するなど、トンネルが導水管となり被害が拡大する危険があると指摘されている。

 これは決して過大な想定ではない。実際に海外では大規模な水害によって地下鉄が水没し、都市機能に大きな影響を与えたケースが報告されている。

 たとえば2001年9月に台風16号が直撃した台湾・台北市では、台風がもたらした「200年に一度」の大雨によって地下鉄(MRT)が約12kmにわたって水没、完全復旧までに3ヵ月を要する被害が発生した。

 また2012年10月にはアメリカ東海岸を襲った史上最大級のハリケーン「サンディ」がもたらした高潮によって、ニューヨーク市地下鉄のトンネルに海水が流入した。事前に運行を停止し、避難を完了させていたため人的被害がなかったのが幸いだが、ほぼ全線が復旧するまで9日間を要した。

 水害は地震や火山噴火などとは異なり、降水量や水位の変化から事前に危険度を予測することができるため、気象情報を活用し早期に避難誘導をすることで職員、乗客ともに人的被害を防ぐことが可能である。

 前述のように、地上は洪水被害がなくても、地下トンネルを経由して流れ込んだ水により、想定外の地域に被害が発生することもあり得る。利用者に対する周知の徹底と、近隣施設や関係機関との連携強化、避難訓練の実施など、防災体制の構築が進んでいる。