非リアルのコミュニケーションは
ネガティブな方向に流れる

 非常に不思議なことですが、オンラインゲームのバーチャルな世界も、インターネットという非対面の世界も、コミュニケーションを長く続ければ続けるほどネガティブな情報ばかりになり、人間関係が悪化していく傾向が見られます。

 具体的には「言われなき批判」「荒らし」「炎上」といった類いのものです。

 サイバーカスケードという言葉がありますが、批評家でブロガーの荻上チキさんはその著書『ウェブ炎上』(筑摩書房)でサイバーカスケードを「ネット上の集団行動」と呼び、こう評しています。

 「これらの集団行動は、たとえ同じメカニズムでも、その現れ方によって時にポジティブにとらえられることもあれば、炎上などのようにネガティブにとらえられることもあります。これは非常に重要な点です。サイバーカスケードのネガティブな発露について考察する際、ついつい『サイバーカスケードをなくそう』という発想をしてしまう方も多いと思われますが、そのような目論見はインターネットの長所、あるいはインターネットの性質自体を否定することになりかねません」

 その言葉通り、集団で良い方向へ向かった事例もないわけではありません。

 たとえば、白血病の子どもを救おうとネット上で呼びかけたことで、多額の募金が集まったというのは良い例でしょう。

 しかし、こうした話は数えるほどしか耳にしません。ほとんどが誰かを叩いた、誹謗中傷した、集中攻撃されたというような悪い話が圧倒的です。どちらに転ぶ可能性もあると安易に言えないほど、ネガティブな方向へ流れてしまっているように感じます。

 ある方が私に話してくれた話が印象的でした。

 その方は軽度のうつ状態なのですが、好きな韓流スターのコミュニティーに入って楽しみを見つけようとしたそうです。

 韓流スターに関連する楽しい情報を話そうとコミュニティーに参加したその方は、最初のうちはテレビの出演情報やファン・ミーティングなどの話題でにぎわっていたことにとても満足していたそうです。

 しかし、コミュニケーションが深まる中で、ある人が「私はうつだ」と言い出します。そのとたん、話題は一気に暗くネガティブな方向へ進んでいったのです。

 やがて、コミュニティーは「あなたの言い方はひどい」などという揉め事ばかりになってしまったといいます。その方は、せっかく気晴らしをしようと参加したのに、かえって嫌な気持ちになってしまったそうです。