望ましいことではないが、法人向けの証券ビジネスの定石として、収益が悪化した金融機関は、無理なリスクを取って、大きな手数料を払ってくれる可能性が大きい「超上客」候補だ。急激に収益が悪化した地銀などは、証券マンにとって、胸がどきどきするような大口見込み客だ。目先の収益を作る必要性が大きく、担当者は個人の人事評価を気にしており、金融マンなので中途半端に金融商品の知識があるから、「絶好の潜在顧客(カモ!)」なのである。

 次に心配なのは、スルガ銀行で一早く問題化した「貸家向けローン」の不良化だ。相続対策を強調するセールスなどと相まって、貸家向けのローンは既にバブルの時期のピークをも大きく超えている。近年建築された多くの貸家にあって、十分な店子がつくとは思えないし、有休状態のまま持ちこたえることができるオーナーが相当数いるとしても、貸出の不良化は避けられないだろう。

 加えて、個人向けに拡大している「カードローン」も、長期的には債権の不良化が心配だ。もっとも、このビジネスは、銀行が総量規制(借手の年収の3分の1まで)の枠外にあることのビジネス倫理の面が、先に問題になるかもしれない。金融庁の新長官に内定した遠藤俊英氏は、現時点では銀行の個人向けのカードローンに対して寛大であるようにお見受けするが、今後の対応に注目したい。

個人が警戒すべき三つのリスク

 地域金融機関と接触する可能性のある個人にとって、警戒すべきリスクが三つある。

 第1に、収益が奮わない金融機関が、投資信託や貯蓄性保険などの運用商品のセールスに力を入れて、個人客がこれに引っ掛かるリスクだ。店頭で銀行員がセールスする運用商品は、つみたてNISA対応商品など一部の例外を除いて、手数料が高過ぎて避けた方がいい「地雷」的なものばかりだ。「運用商品は、決して銀行では買わない」と決めておくといい。例外は、個人向け国債変動金型10年満期だけだろう。

 第2に、そろそろ経営基盤の弱い金融機関の預金の安全性に、警戒心を持つべき頃合いだ。運用にリスクを抱えている金融機関は、金融市場の変動によって、突然苦境に陥る場合がある。特殊な銀行であった日本振興銀行の例を除いて、過去にそうであったように、金曜日の銀行閉店時間後から土日の間に処理ができて、預金者は損をしないという状況が今後も期待できるとは思わない方がいい。少なくとも、預金保険の上限(1人1行1000万円まで)は意識して守っておきたい。

 第3のリスクは、読者の息子さん・娘さんが、地方銀行に就職するリスクだ。これまで「いい就職先」であった金融機関も、ビジネスモデルが行き詰まっているのだから、「地雷」的な(というよりも「時限爆弾」的か)就職先になる可能性が大きい。家庭全体のレベルでは、これが最大のリスクかもしれない。

 もちろん、程度の差はあっても、メガバンクにも同類の問題は忍び寄っているはずだ。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)