46年間、教育一筋――都立中高一貫校合格者シェア52%で業界1位、都立高合格者数1位を獲得した東京都随一の学習塾「ena」の学院長である河端真一氏の最新刊『3万人を教えてわかった 頭のいい子は「習慣」で育つ』がいよいよ発売。結果を出すことで証明してきた、その教え方・学ばせ方は、まさに、最強にして最高の子育て論であり、塾教師としての立場ではなく、家庭にいる保護者ができることをまとめたのが本書です。本連載では、子どもたちにとって貴重な時間を保護者としてどう接するか、保護者の対応次第で子は変わるということを実感していただき、今すぐできることを生活に取り入れてください。この夏休みからぜひ取り組んでほしいことを、本書から一部抜粋し、やさしく解説していきます。
勉強ができる子や頭のいい子に変われる方法
私は大学1年生のときに、東京・国立で貸会議室の1室を借りて、学習塾を始めました。1972年9月のことです。当初5人しかいなかった生徒は、私が大学を卒業する頃には1500人にまで増えていました。
その後も試行錯誤しながら質の高い受験教育を追い求め、中学・高校・大学入試の進学塾事業を拡大。2018年には「都立中高一貫校受験の合格者占有率52%(業界1位)」、「都立高校合格者数1位」という実績を残すことができました。
そして大変幸せなことに、私は46年間、塾教師として、生徒を見続けることができました。その過程のなかで学んだことはたくさんあります。
一つ確実に言えることは、「どんな子でも、『習慣』や『環境』によって、勉強ができる子や頭のいい子に変われる」ということです。
そもそも私が学習塾を始めた理由は、教育的情熱や使命感に燃えていたから、などという大それたものではありません。
高度成長期で建設ラッシュの頃、私の父は、設計士として昼夜を問わずほとんど休みも取らずに働いていました。高校生だった私はその姿を見て、すごいとは思いましたが、父と同じような働き方をしたいとは思いませんでした。
何でもいいから自分でビジネスを立ち上げて、お山の大将になりたいと考えたのです。
実際に大学生になり、何ができるのかと考えたときに、自分の持っているものは受験勉強のスキルだけでした。
このスキルを活用できるのは、家庭教師か塾だ。家庭教師では教えられる生徒数は限られているから、塾をやろう。そんな単純な考えで塾を立ち上げました。
そして、塾を始めてから3ヵ月が経った12月頃のこと。授業の合間に生徒5人とストーブを囲み、彼らの悩みを聞いてアドバイスを送っていたときに、私はこう思いました。
「これが自分にとって天職だ。一生、この仕事を続けていきたい」
彼らとの心の交流を感じて、塾とは人間的な営みの場であり、一生懸けてやるべき職業なのだと気づかされたからです。
46年間にわたって、受験教育に汗水流してきたなかで、密かに誇りに思っていることがあります。
それは、「教育だけをしてきた」ということです。
教育以外の副業にも取り組む同業者が多いなかで、一貫して教育事業だけに全力を注いできました。
本書は特に小中学生の子を持つ保護者に向けて、次のようなことをお伝えしています。
第1章では、最低限知っておいてほしい「学習・受験の基本」を解説しています。第2章では、勉強に取り組む際に参考となる「勉強法と心構え」について記述しています。第3章では、子どもが勉強に没頭するための「環境を整える」方法を解説します。第4章では、「保護者の役割」はどうあるべきかを考察します。第5章では、勉強から少し離れて、「人の成長に必要なもの」として私なりの考えを述べます。第6章では、受験勉強においても社会に出るうえでも欠かせない「時間を支配する」方法を取り上げます。
最初にお断りしておきますが、本書は最先端の受験テクニックや、奇をてらったアイデアを載せてみなさんの気を引こうとするものではありません。
子どもの学力を伸ばすための、基本中の基本である勉強法や心構えを、自分の経験に基づき、信念に沿ってまとめたものです。
基本中の基本を忠実に徹底することこそが、現代の子どもに欠けているものであり、大切なものだと考えています。
本書の内容を実践していただくことを通して、子どもの成長に少しでも役立つことができれば幸いです。