神経疾患も汗の出ない原因となります。中枢神経性としては脳血管障害、脳炎、頚髄障害、多系統萎縮症、多発性硬化症などが知られています。末梢神経性としては糖尿病、アルコール中毒などに伴う末梢神経障害、脱髄性多発末梢神経障害、自律神経障害などです。大量の水を飲み、尿の回数も多いのに汗が出ない場合は中枢性尿崩症の可能性を考えます。原因が明らかでない無汗症の症例もあります。その場合、後天的特発性全身性無汗症の診断になります。

大人の「アトピー性皮膚炎」の人は
汗をかかなければさらに悪化する可能性も

――汗が出なくなる皮膚疾患として挙げられていた「アトピー性皮膚炎」は、近年、大人になってから発症する人が増えています。アトピー性皮膚炎では汗はかゆみを招くため、悪化の要因と考えられがちですが、汗をかいた方がいいのでしょうか。

 成人のアトピー性皮膚炎の方を対象に発汗機能の評価を行うと、アトピー性皮膚炎のない人と比較して、発汗量は少なく、汗が出てくるまでに要する時間が長いことがわかっています。つまり、アトピー性皮膚炎において、汗は少しずつ時間をかけてゆっくり排泄されているようです。

 発汗量が減ると、皮膚温は上昇し、乾燥し、病原体への抵抗性は損なわれるので、アトピー性皮膚炎にさらに悪影響を及ぼすと考えられます。

 これまでの汗に関する研究から、成人のアトピー性皮膚炎患者はアレルギー炎症、自律神経失調、不安などの影響によって、必要十分な汗をかけていないことがわかっています。ですから、患者さんが適切に「汗をかける」ことも重要な治療到達目標となること意識しています。

 私がアトピー性皮膚炎患者に対する汗対策指導の内容をご紹介しますと、発汗を怖がっている方、汗をかいてかゆいという方には 汗はかけないよりはかけた方がよいですよね、と話します。そして、汗をかいても不都合のない状態に治療することを共通の目標とします。

 一方、汗をかけるアトピー性皮膚炎の方もいます。そういう方には、汗をかいた後は汗が皮膚表面に長時間残らないよう洗い流す、おしぼりで吸い取るなどの対策をするよう勧めています。ただし、症状をよい状態で維持しても、汗をかいて急に悪化するという方も少なくありません。治療はあせらず、うまく付き合いながら、症状をコントロールすることを目標において頑張ってください。