日本でも高度成長期の次は
安定成長期だった

 実は、中国の経済成長は、日本の経済成長と非常に似ている。少し余談になるが、筆者は中国経済の専門家に「戦後日本経済史を学ぶと、中国の今後が分かる」と説いている。実際、筆者の中国経済の予測は、専門外の分野であるにもかかわらず、これまで20年ほど大変よく当たっていた。肝心な日本経済の予測はあまり当たっていなかったので、自慢にはならないのだが…。

 日本の高度成長期、トラクターが導入された農村から若者が都会に出てきて、工場で働いた。その後、物の需要よりサービスの需要が伸びると、人々がサービス業で働くようになり、高度成長期から安定成長期に移行した。

 日本の場合、「石油ショックで高度成長が終わった」と言われることが多いが、石油ショックは高度成長から安定成長への移行を決定づけた表面的なきっかけにすぎず、根本的な原因は前述したように底流で静かに進行していた「前年の水準が高くなったこと」と「産業構造がサービス業中心になったこと」にあったのだ。

「債務問題」はともかく
トランプリスクには要注目

 中国では、外的なショックがなければ成長率が緩やかに低下していき、高度成長から安定成長へと連続的に移行していくだろう。というか、むしろすでに移行中である。後は、スムーズに移行するのか、日本のように非連続的に移行するのかという点が注目されるところだ。

 中国国内にはいわゆる「債務問題」があり、これがいよいよ表面化して経済が混乱するのではないかという専門家も多い。ただ、中国では以前から「バブルが崩壊する」などと言われ続けながらも、特段何も起きていないことに鑑みると、今回も“オオカミ少年”なのではないかと筆者は考えている。リーマンショックを乗り切ったことを見ても、中国共産党が経済をコントロールする力は、西側先進諸国の政府とは比較にならないものだからだ。

 ただ、トランプ米大統領が、中国経済を本気で潰しに行っている可能性には注意が必要だ。20年後の覇権争いを見越し、米国は徹底的に中国を叩いておくつもりかもしれないからだ。もしかすると、「日本の高度成長は石油ショックで終わり、中国の高度成長はトランプショックで終わった」と歴史の本に載る可能性もある。そのあたりについては、拙稿「米国は覇権を懸け本気で経済戦争による中国封じ込めを狙っている」をご参照いただきたい。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)