仕事を面白くしたいなら
全部捨てる

 計算すれば正確な加工ができるのに、にわか職人は自分の感覚に頼り、自分の技術を社内で共有しようとしません。
 私は、そんなにわか職人に疑問を感じ、職人技術の定量化を目指しました。

 当時は、家庭用パソコンが普及し始めた頃でした。
 ある講習会で初めてパソコンに触れた私は、「これを工作機械の自動制御に使えないか」と考えました。

 職人技をデータベース化するにあたり、まず、製品ごとに加工工程を細分化して、似ているもの同士を括(くく)って分類しました。

 製品を加工する際、職人にはそれぞれ異なる暗黙知(カンと経験によるノウハウ)があります。

 ある製品を削るのに、「どの刃物を、どの順番で使って、どのような位置から、どれだけの回転数で、どれぐらいの速さで削るのか」を聞くと、職人ごとに返ってくる答えが違う。つまり、職人によってやり方が違うわけです。

 そこで、それぞれの言い分を戦わせながら、当社の標準データを導き出し、個人の経験に頼ったあいまいな情報をすべて捨てさせました。

 標準データを共有して、「この製品をつくるときは、この刃物を、この順番で、この位置から、この回転数で、このスピードで加工する」ように決めたのです。

 同時に、作業環境をデータベース化しました。
 工作機械やホルダー、刃物、ボルトなどすべてに認識番号を振って、収納場所と関連づけたのです。

 今回、年間2000人の見学者が訪れる、鉄工所なのに鉄工所らしくない「HILLTOP」の本社屋や工場、社内の雰囲気を初めて公開しました。ピンクの本社屋、オレンジのエレベータ、カフェテリア風の社員食堂など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事をご覧いただければと思います。