他が絶対に勝てない理由は、サービス特典の「次元の違う娯楽力」

もうひとつ、アマゾンのすごさは「お客様へのサービス力」だ。

アマゾンは、「地球上で最もお客様を大切にする企業であること」を掲げている。

アマゾンの「お客様へのサービス」たるやすごい。

ネットで注文すると当日か翌日には届き、人気の音楽、ドラマや国民的スポーツすらも無料で、即時に見られる。

写真保存のクラウドサービスも使える。
矢継ぎ早に新しいサービスが提供され、会員は一日の中でアマゾンを利用する時間が知らぬ間に増え続けることになる。

結果として、アマゾンが生活に占める割合は大きくなり、会員はどっぷりつかってしまい、脱会する気すら起きないだろう。

しかも、顧客にとってはアマゾンから提供されるサービスで不利益を被ることはなにもない。過剰すぎるほどの「お客様へのサービス」が行き届いているだけだ。

日本のプライム会員料金はいずれ引き上げられるだろう

アメリカの調査会社によると、アマゾン利用者の6割がプライムに入会している。

また、前述したとおり、アマゾンでの利用額は、非会員だと年間平均で700ドル、しかし会員は1300ドルとおよそ2倍である。

いかにプライムのサービスが、ユーザーをアマゾンにどっぷりはまらせているかを物語る数値だ。

実際、米国での年会費は、当初は79ドルだったものが2014年に99ドルに引き上げられたが、その年の会員数は値上げにもかかわらず、5割増えたという。ちなみに、今年の4月にも99ドルから119ドルに引き上げられている。

日本のプライム会員費は3900円。
これは世界でいちばん安いことからも、近い将来たぶん値上げに踏み切るであろう。

ここで、興味深い事例を紹介しよう。

アマゾンの競合のウォルマート・ストアーズが、アマゾンプライムに対抗して、まるでアマゾンプライムのようなサービスを始めたことがある。翌日配送や返品が無料になる会員制サービスだ。

しかし、1年も経たずに撤退に追い込まれた。
年会費は49ドルで、99ドルのプライムに比べて50ドルも安く設定していたにもかかわらずだ。

このウォルマートの失敗は、アマゾンプライムの価値が配送の迅速さだけではないことを見抜けなかったことにあるだろう。

プライム会員の少なからぬ数のユーザーは、即日無料配送だけが魅力だから登録しているのではない。