1995年の兵庫県南部地震以降、地殻変動の観測網は稠密(ちゅうみつ)に展開され、海底でも観測が行われており、現在、それを基にプレート境界に一定の条件を与えて内陸での地殻変動を再現するシミュレーションが行えるようになってきました。震源断層の形状や断層の動きやすさについて資料が充実してくると、より精度の高い予測が可能になりつつあると考えています。

 先日の大阪府北部地震の発生によって、上町断層での地震発生がより切迫しているとは考えていませんが、南海トラフのプレート境界での固着の進行によって、地震が発生しやすい状態は、プレート境界での巨大地震の発生まで継続すると考えています。大阪府北部地震は、こうした状況にあることの1つの警告だと受け止めるべきでしょう。

 近畿地方は、世界的にもまれな高い密度で活断層が分布しています。この中で特に南北方向の断層は傾斜している特徴があります。内陸の震源断層の場合、地震は15km程度の深さで発生することが多いので、震源断層が傾斜している場合、地表の活断層とは離れた場所で強い揺れに襲われることになります。個々の活断層の活動間隔は長いのですが、近畿地方にはたくさんの断層がありますので、地震発生リスクの高い地域となります。

 プレート境界の巨大地震との関係も考慮した、物理モデルとしての内陸地震の長期予測については、今後、断層にかかる力や断層の動きやすさを評価して、定量的な評価が可能になるのではないかと考えています。ただし、これは数十年間隔での地震発生リスクを示すもので、「いつ、どこで起こる」と言えるレベルではありません。

 特に日本海側にお住まいの方は、南海トラフ地震をひとごとだと思いがちです。しかし先ほどもお話ししたように、2011年の東北地方太平洋沖地震の前には新潟で中越地震や中越沖地震が起きたり、先の南海トラフ地震である東南海地震の一連の始まりは1943年の鳥取地震で、その後に福井地震が起きたりするなど、巨大地震の前後では日本海側で内陸地震が起きています。

 これは、日本列島の形成プロセスが影響して、日本海側に弱面である断層が分布していることや、プレート境界での固着による陸側プレート内での力の集中が、日本海側で起きやすいためだとも考えられます。ですから、決して南海トラフ地震を単体とは思わず、その前後にいろいろな地震が起こる可能性があることを忘れないでください。

 また、実は現在分かっている活断層以外にも、存在が知られていない震源断層はまだまだあります。2000年に起きたM7.3の鳥取県西部地震の際に地表に現れた断層は、ごく短いもので、事前にあの場所に震源断層があることは分かっていませんでした。そうした例もありますので、活断層がない場所でも絶対安全とは、決して思わないでいただきたいのです。