時代が変われば世界観も変わる

 最初の世界観である「モバイルファースト、クラウドファースト」は、さまざまなモバイル機器が世の中に広がり、クラウドによってネットワークが実現されて、どこでも使える、どこでも働ける、というものだった。

 これが、2017年に発表した世界観では、「インテリジェントクラウド、インテリジェントエッジ」に変わった。

「マルチデバイス、マルチセンサー」「AI」「ユビキタスコンピューティング」の3つのキーワードが出されていたが、要するにモバイルのデバイスそのものが、コンピューターとしての能力を持ち始めるようになるということである。平野氏は言う。

「モバイルデバイスは一度、クラウドに接続して、そこから何かをやっていたというところから、デバイスにもAIがつき、インテリジェントに自らが動く時代になるということです」

 IoTはわかりやすい例だろう。これまではIoTを使って、出たデータをクラウドに持っていって、AIを使ってコンピューティングをして分析するなり、対応するなりしていた。しかし、これからはデバイス本体にAIが入る。クラウドに通す間もなくコンピューティングをやってくれる。

「ありとあらゆるもので、デバイス側でコンピューティングができる時代が来るということです。では、そのために何をしないといけないか。ハードウェアとの関係をどうしないといけないか」

 世界は変わっていくのだ。だから、世界観も変わっていくのである。それにしても、会社が最も大事にしていたものの一部を変えたのである。

「そのときどきに、会社がやらなければいけないことも変わっていくわけですね。逆にいえば、ミッションを明確にし、何をドメインにしないといけないかを世界観から考えることができる。そうすると、この製品はずっと売れてきたから固執しないといけないとか、過去がこうだったからこうしないといけないとか、考えなくても済むようになるわけです」