こうして、ついにこの人は「発言をしない」、という選択に行き着きます。そして、自分の意見とは逆の、集団の決定内容を、無言で是認してしまうことになるのです。

 集団思考は、大きな弊害をもたらします。よくありがちなのは、発言をしなかった人が、「じつは、心の中で決定内容と逆の意見を持っていた」というケース。

 せっかく会議で議論をしても、発言を控えてしまうと、個人の意見が情報として共有されません。そればかりか、声の大きい人や、押しの強い人の意見が通ってしまい、集団の意思決定が、本来あるべきものとは異なってしまうことにもなりかねません。

 集団思考は、国家の軍事戦略や、企業の経営戦略など、重大な意思決定を行なう会議でも、頻繁に発生してきたとされています。社会心理学では、集団の意思決定の失敗事例として、集団思考に関する多くの研究が行なわれています。

集団として統制のとれた行動が
生まれる「群知能」とは

 集団思考の反対の概念として、「群知能」があります。これは、虫や魚や鳥などの群れにおいて、各個体が独立して活動しつつも、群れ全体として統制のとれた行動をする様子を指します。

 夕空に雁がV字型の隊列で飛んでいく姿や、海中でイワシの群れが整然と回遊する姿は、群知能がうまく働いている状態です。群知能がうまく機能するためには、集団内の単純な法則に従って、各メンバーが自立して行動することがカギとなります。

 そこから、集団として統制のとれた複雑な行動が生まれます。