株価が下がるにはそれなりの理由がある。業績が悪化したり財務内容が悪くなったりと、企業自身に原因があれば、下がっても不思議ではないし、往々にしてそういう場合はさらに悪化する“シグナル”となることが多いので、できることなら早く売ってしまった方がいい場合も多い。

 しかしながら、中にはその企業固有の原因ではなく、市場にリスクオフ感が漂って下げることもある。例えば、東日本大震災やイギリスのEU離脱のようなことが起きた場合は、個別企業の業績に直ちに影響が出るわけではない。にもかかわらず、市場のセンチメントによって大きく下げたのであれば、それは買ってもいいだろう。そうした市場の行き過ぎは、やがて修正されることになるからだ。

 つまりナンピン買いをした方がいいと思われる唯一の場合は、「最初の買値が適正(割安)であり、その後何らかの外部的な理由で下がったことにより、市場全体の下落に同調して下がった場合」のみだろう。この場合、企業価値そのものには何ら変わりがないのだから、元の買値よりもさらに割安な値段で買うことができるため、積極的に買い増しをしてもいい。

さっさと別の銘柄に変えた方が
早く損をリカバリーできる

 冒頭でも書いたようにナンピン買いは「安いところで買うことによって、前の買値と合算して平均すれば購入コストが下がるため、元の買値に戻れば儲かる」という考えがその背景にあるのだが、“元の買値に戻れば”というのはあまり意味のない願望にすぎない。

 それに、ナンピン買いをすれば買い付けコストが下がるというが、それは最初に買っている株のコストが下がるだけであって、後から買ったものは買った途端に取得コストは上がる。要は単に賭け金を増やしているだけの話なのである。

 つまり多くの場合、ナンピン買いは単なる気休めにすぎないのだ。むしろ、下がった株を保有することにこだわらず、さっさと売って別の銘柄に切り替えた方が、ずっと早く損をリカバリーすることができるかもしれない。

 株価が下がると、株のことを考えるのも、株価を見るのも嫌になるだろうが、そういう時こそなぜ下がったのか、この下げで買い増しする価値があるのか、それとも今後のことを考えれば売ってしまった方がいいのか、といったことを慎重に考えるべきではないだろうか。

(経済コラムニスト 大江英樹)