医療や介護のプロにすぐに頼るのではなく、市民ができるだけ自分たちの力を発揮できるようにと、仕組みを変えつつある。

「これまでは、税金を払っているのだからサービスは当然受ける権利があると多くの国民は考えていた。それを、自分たちでできることは自分たちで、と変えねばならない」

 家庭医(GP)にも意識改革が及ぶ。地域との付き合いが深く、住民からの信頼度は高い。国民はすべて近所の家庭医に登録する制度が定着しているからだ。

「GPから2次医療機関への紹介状をすぐに出すのではなく、まず地域のケアサービスを活用することで対処できないか考えてもらう。できるだけ医療機関に頼らないようにしたい」

 自治体が担うWMOの業務は広がった。住宅改修や車椅子の貸与のほか、美術館などへの同行ボランティアの派遣、ホームレスへの宿泊紹介、家庭内暴力への対応など高齢者だけではなく、「生活困難者」向けの業務を一手に担う。

 強調したのは「地域ケア(バイクゾルフ wijkzorg)」という考え方だった。本人の左右に2つのグループを描いて説明する(図2参照)。右側に家庭医、訪問看護師、病院、保健センター、左側に家族、ボランティア、福祉施設、同伴者などがあり、両グループをまたぐように「地域ケア」と書かれている。右側の医療系の専門職集団と左側の近隣の住民集団という2つのグループを結びつけ、両グループが本人を支援するというのが「地域ケア」である。(図2)

 右側の制度上の組織だけではこれからの介護施策は限界があるとみたのだろう。その限界を補完するために、左側の地域住民の関わりが求められる。この両グループの融合、即ち地域ケアを動かすために新たに設けたのが「地域チーム(バイクチームwijkteam)」だ。

 そして、「従来の制度では、当事者への理解不足もあって、不必要なサービスを提供していたことも多かった。それを効率化させねばならない。必要ない人まで施設入居していた」とも話す。従来施策の基本的な見直しが始まっているようだ。

 この2015年改革で、国から自治体に渡される交付金は25%も削減されたが、

「どの自治体からも不平不満の声は出ていません。利用者本位で動いてみると、この新しい予算内できちんとできることが分かったようです」

「国の制度から自治体・地域の自主事業へ」という大きな流れは欧州諸国に共通する。オランダでも同様だが、かなりドラスティックに進められているのは間違いなさそうだ。