日本人の文化特性にマッチした有効な方法

永田 なるほど。面白いアプローチです。ここにも文化特性が関わっていますね。基本的に欧米の人たち、特に学校で哲学を学ぶフランス人は、何かを生んだり変えようとする際に、まず頭の中で森を描いて、その後に、林、木、幹、小枝、葉っぱを見ようとする人が多い。なので、彼らに「これお願いだからやって」と頼むと、真っ先に「なぜ?目的は?」と聞いてきます。つまり、人にものを頼む時に、しっかり目的を伝え、かつ本人がその目的を納得しなければ動いてくれません。時には、こういう目的よりもこういう狙いでやった方がいいのではと、川上の議論を仕掛けられたりします。

大塚 コンセプトから細部へ、ですね。

永田 はい。逆に日本人は、詳細からコンセプトです。「これお願いだからやって」と頼むと、まず「どうやって?」と聞いてきます。つまり「これ」という自分の目の前にある葉っぱを、きちんとつくるにはどうしたらいいか?が気になります。集団の中の自分の仕事たる「これ」をきちっとやるためのプロセス、つまり「やり方」を知りたがります。なので、皆さんにとって身近なことから「なぜこうなるの?」を導いて、次に出てきた答えに対し、なぜを繰り返し、徐々にコンセプト近づいて描いていく…こうした御社の小から大の流れへのアプローチは、僕も日本の大学でよくやるのですが、日本人の文化特性にマッチした有効な方法かと思います。

大塚 海外との比較で見えてくるものがありますね、とても興味深いです。これまでの日本の社会では、議論するという認識や機会が足りなかった。まずは、わかりやすく小から大へと議論を深め、高めていくことで、働き方も変わり、ワークライフバランスも良いものになってくると思っています。

永田 環境が変わると文化は変わると冒頭でお伝えしましたが、まさに御社がやられていることは、日本人の文化を良い方向に変えているという好例です。文化的に見ると、そもそも欧米社会とは逆に日本では、議論さらには討論や反論は、良いものとされてこなかった。また、小さい時からそれを行う機会もほとんどなかった。なので、御社が導く議論を通じて、日本の皆さんの人権や権利の意識も含め、さまざまな文化が変わっていくことを期待したいです。

>>続編『日本から残業をなくすには「お客様は神様」を変える必要がある(9月6日公開予定)に続きます

大塚万紀子氏
株式会社ワーク・ライフバランス創業メンバー、同社パートナーコンサルタント。金沢工業大学大学院客員教授、政府関連各種委員会メンバーも務める。豊富なワークライフバランスの知識を基に現場の働き方にそったコンサルティングを通じスピーディかつダイナミックな働き方改革を仕掛ける。