すごく基本的なことですが、お金持ちの宿泊するスイートルームは「お部屋が広い」ということです。

 スイートルームに長期に連泊されていたそのお客さまは、朝早くから仕事で外出し、夜もたびたび遅くに帰ってくるなど、とても忙しい経営者でした。
 シャワーを浴び、やっとゆっくり本が読めるというリラックスできる時間に、さあ、ベッドで本を読もうと思ってもそこにあるはずの本がなく、お客さまはビックリしたに違いありません。

 その本がどこにあるのかと探したり、ボクがダイニングルームのテレビの前に置きっぱなしにしてしまった本を取ってベッドルームまで戻るという「ひと手間」が必要となってしまったわけです。

 本物のお金持ちがホテルに泊まる時は、必要最低限の物しか持参されないことが多いのですが、仕事関係のものはデスクまわりに、プライベートのものはベッドまわりに、コスメ等はバスルームにと、お部屋内での過ごし方や動線を考えて物を「機能的」に配置していることが多いです。

 お金持ちは物の配置にムダがなく、目的があり、かつシンプルであることが、長くホテルで働くうちにボクにもわかってきました。

 一方、たくさんの物が無目的にゴチャゴチャ置いてあるというのが、よくあるお部屋の使い方です。
「思考のクセは部屋の使い方でわかる」と言われることがありますが、これはあながち間違っていないように思います。

 お客さまがお部屋で物をどう置くかという理由には、性格や価値観の影響もあるでしょうが、それらの理由を抜きにしても、お金持ちに共通する意識の特徴は、「合理性や機能性をとても大切にしている」ということです。

「ムダ」を嫌い、「エコ」を意識する。
 それは自然環境云々だけの話ではなく、持ち物・考え方・仕事の仕方・時間の過ごし方・交友関係・生き方などすべてにおいてです。

『天国おじい』に登場する多くの成功者の言葉が、シンプルかつ本質的だったのはそのためだったのでしょう。

 おじいは言います。