こうした結果を踏まえてスタイネマン教授は、過敏症はアメリカ国民の間に急速に広がっている深刻な病気であると警鐘を鳴らしている。

(注1)アン・スタイネマン教授は、環境汚染物質やその健康への影響などに関する国際的な専門家で、早くから「香害」問題に取り組んできた。2014年秋までカリフォルニア大学サンディエゴ校教授だった。この調査データを使って書かれた論文のうち、この記事は次の2つに依った。
National Prevalence and Effects of Multiple Chemical Sensitivities
Fragranced consumer products: exposures and effects from emissions
前者についての解説記事「アメリカ人の4人に1人はよくある化学物質に暴露して苦しんでいる」の安間武・訳が、化学物質問題市民研究会のサイトに載っている。

(注2)化学物質過敏症は、世界では「多種化学物質過敏状態」(Multiple Chemical Sensitivities)という病名が使われることが多い。

(注3)アメリカは化学物質過敏症の研究が始まった国だが、いまだにアメリカ医学界は過敏症を正式の病気とは認めていない。世界では、世界保健機関(WHO)が認めておらず、「国際疾病分類(ICD10)」に基づく「標準病名マスター」に過敏症を身体的疾患として登録しているのはドイツ・オーストリア・日本くらいだ。

(注4)ADAは、心身に病気や障害がある人々が、雇用や公共的なサービス、銀行・レストランなど民間企業の営業場所で差別を受けないようにすることを関係者に義務づけている。しかし実際の運用では、過敏症の人が「障害を持つ」と認定されるかどうかはケースバイケースで、雇用者は過敏症の人をいろんな理由をつけて排除することが多いといわれる。

公共のトイレ使えず
仕事に影響、休職や退職も

 いったいなぜ、アメリカでは「香害」がこれほど深刻になったのか。

 調査結果によると、アメリカの成人の99.1%が、自分や他人が使った「香りつき製品」に週に1度以上さらされており、34.7%が1つ以上の香り製品によって「1つ以上の健康に有害な影響」を受けている。つまり成人の3人に1人が「香害」の被害者なのだ。

 アンケートで例示された香りつき製品は、「消臭芳香スプレーや芳香・脱臭・防臭剤」「シャンプーや化粧品などのパーソナルケア製品」「清掃用製品」「柔軟剤・合成洗剤などの洗濯用製品」「家庭用製品」「香水」などだ。

 また有害な健康への影響として挙げられたのは、「偏頭痛」「ぜんそく発作」「神経症状」「呼吸器症状」「皮膚症状」などの訴えだ。男女別では女性の方が有害な影響を受ける割合が高かった。

 被害を受けるのはどんな場合か尋ねたところ、「香りつき製品を身につけた人に近づいたとき」が最も多く、「消臭芳香スプレーや芳香剤にさらされたとき」、「香りつき洗浄剤で清掃された部屋に入ったとき」、「排気口から排出される洗濯製品の香り」などが続いた。