このように、日頃から家訓のようにして、「うちの方針はこうなんだ」ということをはっきりと親が話していると、相続でモメることは少なくなるものです。

「親の思い」を相続するのが理想

 私たちは、どうしても「実家」という思い出の詰まった建物にこだわりがちです。ですから、誰も住まなくなっても、実家を売る踏ん切りがつきません。実家を売ってしまったら、家族の思い出だけでなく親の思いまでもがこの世から消えてなくなるような気がしてしまうからです。でも、「相続」とは親の意思を続けることです。そう考えれば、「実家」という形にこだわる必要はないと私は思います。

「財産遺して銅メダル、思い出遺して銀メダル、生き方遺して金メダル」という言葉があります。極端なことをいえば、形あるものにこだわることなく、自分の心のなかに親の思いを継いでいけばいいのではないでしょうか。

 そうはいっても、形あるものがまったくないというのでは、少々心細くなります。そこで大切になるのが、まさに形見ではないでしょうか。たとえ実家がなくなったとしても、形見を受け継いでいくことで、親の思いを引き継げるような気がしてきます。

 ヨーロッパに行くと、女性は立派な指輪をしています。お母さんがお嫁さんに指輪をつなぎ、そして、そのお嫁さんが次のお嫁さんにつないでいくという、そういう風習があります。その風習のなかに、形見に寄せる気持ちが込められているのです。