「何人の人を救えるか?」
チキンラーメンに込められた
九紫・安藤さんの願い

「できる九紫」は見返りを求めない広い心根を発揮します。
 安藤さんの魅力もそこにあります。
 カップラーメンブームで市場が一気に拡大していた時期。この時期は安藤さんの特許紛争が一段落したころでもあるのですが、日清食品の独占的技術となった特許を同業27社に使用実施の許諾という形で公開したのです。

 通常で考えれば、「技術の独占で自社のみが徹底有利に」と考えるものですが、安藤さんの考えは次元が違います。

「何人の人を救えるか」

 安藤さんの心の奥底にはこんな思いがあったのではないかと思います。
 難しい言葉で言えば「利他の精神」。簡単な言葉で言うと「愛」です。

 安藤百福さんの開発したチキンラーメン。
 その発想の原点は戦後すぐの食糧難、飢餓の時代を安藤さん自身が経験したことにあります。
 暖かくて誰でも簡単につくれる。しかも安い。そんな食品を……という思い。そして、「食こそ人間の原点」という思い。
安藤さんいわく、

《食がなければ衣も住も、芸術も文化もあったものではない》
(安藤百福著『魔法のラーメン物語』日本経済新聞出版社)

 平和な世の中で暮らしている私たち戦後の昭和生まれの世代、そして平成世代。
 実体感としての飢餓は経験がありません。
 ですが、いま現在、貧困に苦しんでいる遠い国のどこかでインスタントラーメンが人々を救っていると思うと、安藤さんの成した仕事の重さと「火の九紫」の「太陽のようなあたたかい愛」を感じずにはいられません。

 その精神を、私たちも見習っていきたいものです。

中野 博(Hiroshi Nakano)
信和義塾大學校創設者兼塾長、経営コンサルタント
早稲田大学商学部卒業。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院ブランディング実践講座エグゼグティブコースを修める。ハーバードビジネススクールでは経営学を学ぶ(いずれも短期集中型の経営者クラス)。1992年、地球サミットに国連認定ジャーナリストとして参加したことを契機に環境ジャーナリストとして活動。1997年の地球温暖化防止京都会議を機に、株式会社エコライフ研究所設立。環境ジャーナリストとしての取材・分析力と経営コンサルタントとしての提案力をベースに、800社以上を環境ビジネスに参入させ成果を挙げる。その傍ら、住宅、環境を軸にした本を多数出版(本書が30冊目)。講演依頼も多く、国内外で2000回以上の実績。2005年、教育研修会社の株式会社ゴクーを設立。1万人のサンプリングを体系化した『9code(ナインコード)』をもとに、信和義塾大學校で指導にあたるほか、企業や各種組織で『9code』を利用したコンサルティングや人材活用研修も多い。現在、信和義塾大學校は、世界6ヵ国20都市以上にあり、塾生は700名超。