生活習慣が異なり、コミュニケーションが成立しない人が近隣に、同じ地区に一緒に住めば、問題は起きやすい。 

かつてテーブルに書かれていた中国人住民を中傷する落書き
かつてテーブルに書かれていた中国人住民を中傷する落書き

  なぜならば、両者の生活習慣、もっと言えば、「当たり前」が異なるし、それを知ることすら困難だからだ。日本人住民と中国人住民の違いが増えれば増えるほど、問題は顕在化する一方、両者の距離は離れていく。

 別の言い方をすれば、誰が悪いわけでもなく、意図的に問題とされる行為をしているわけでもない。普通に暮らしていたら違いが明らかになっていった、というだけのことだ。

 両者が共生できる環境を創出するためには、両者の「接点」を作っていくことが重要だ。しかし、「接点」は放っておいて自然にできるものではない(これまでに放っておいて自然発生的に出来上がったのは、嫌悪や対立だった)。加えて、日本人住民に高齢者が多くなれば、なおさら接点は作りにくくなる。

「接点」となる交流の
場をどう作ったか

  こうした状況を踏まえ、オランダで移民との共生の実態について調査をした経験を持ち、芝園団地の自治会役員も務める岡崎氏が、試行錯誤を繰り返しつつ徐々に「接点」を作り出していった。

学生が企画・主導し、日中両住民が共同して落書きされていた共用スペースのテーブルと椅子を塗り替えたもの
落書きされていた共用スペースのテーブルと椅子を、学生が企画・主導し、日中両住民が共同で塗り替えた

 そして同氏の音頭で実施され、中国人住民の一部も参加した単発の行事に、同氏の呼びかけを受けて参加した東大生2人が、岡崎氏と連携しつつ「芝園かけはしプロジェクト」を開始。地道にさまざまな大学の学生に声をかけて部員を集め、現在は4年目に入り、代表を務める東大生のほか、慶應大、早稲田大、埼玉大等から30人程度の学生が参加している。岡崎氏いわく、こうした学生たちが来てくれたおかげで、「接点」となる交流の場作りができたそうである。

 こうした場には、交流会等の近くで話をするような機会のみならず、一緒に何かを作る機会を通じて交流する「概念的交流」も含んでいるとのこと。

 前者の例としては、自治会との数ヵ月にわたる議論の末に開催が決定された、持ち寄りの食事会がある。後者の例としては、落書きされた共用スペースのテーブルとベンチを日中両住民が共同で塗り直し、そこに日中両住民の子どもたちがさまざまな色の手形を押すというものがある。

 一緒に作り上げ、協働の記憶を形にして残す、これがコミュニケーション、さらには関係構築の土台となっていく。