商業的平和論はいわば性悪説で、人は利益で誘導することでしか平和になれないという考えです。それに対して民主的平和論の人たちは性善説寄りです。人間は良きものだから、民主化し市民が国を統治すれば戦争なんかしないはずだ、と。でも、私がこれまで本に書いてきたように、実際は戦争をしている大統領って、民主主義で選ばれ、世論に後押しされているんですね。だから、たぶん性善説は間違ってて、性悪説が正しい。

 ところが、リベラリズムの中にある商業的平和論を採用したはずのトランプがここまで批判にさらされているのはなぜか。その平和が、悪を許容する平和だからなんです。そもそもトランプ自身も国内では白人優位主義者に応援されており、民主主義と自由主義の価値を理解してないようだ、北朝鮮の人権問題を等閑視している…といった批判を目にしますね。その批判は根拠あるものです。だからといって、戦争が役に立つわけじゃない。「何はなくともまずは平和」ということには正義があるのです。

 私たちの時代で一番の危機は、イラク戦争によって引き起こされた統治の崩壊と中東の人道危機ですよね。それを見ていながら、またしても戦争をしようと思う人がいるとすれば驚きでしかありません。

自民党支持者の中でも
対外強硬派の右翼はごく少数

はつざわ・あり/写真家。1973年フランス・パリ生まれ。上智大学文学部社会学科卒業。第13期写真ワークショップ・コルプス修了。第29回東川賞新人作家賞受賞。写真集・書籍に『隣人。38度線の北』『隣人、それから。38度線の北』(共に徳間書店)など Photo by Kazutoshi Sumitomo

初沢 トランプ大統領の北朝鮮に対する商業的平和論の戦略では、長距離弾道ミサイルはこれ以上開発せず凍結し、核も段階的に減らし、同時に民間企業に投資を促す。そして、首脳会談も継続する中で信頼関係を築いていけば、最終的に北朝鮮が核保有への意欲を失う、という期待感がある?

三浦 うーん、核はなくらなくたっていいやくらいに、志はもっと低い感じですね。

初沢 ですよね。おそらくそういう発想なんだろうと僕も感じます。しかし一方で日本政府は、中距離、短距離弾道ミサイルも全て破棄しなければ交渉しないみたいなことを米朝会談前に言い始めました。アメリカにとっては長距離ミサイルさえなければ危機は回避できるが、そうなると日本だけが危機にさらされる。だから中短距離も、ということなんでしょうが、自衛のための中短距離ミサイルって基本的にどこの国でも持ってていいものじゃないですか。

三浦 核だって不平等さはあります。NPT(核拡散防止条約)から脱退した以上は、国連が制裁を下すことはできても北朝鮮の核・ミサイル開発や保有を止めることはできない。でも、だからといって私たちも大幅に軍拡すればいいかというと、そんなお金もないし、仮にお金があったとしても優先配分の問題としてどこまで軍拡に使うべきかを考えざるを得ないわけです。だから、日本政府は原則論を展開しているのです。北朝鮮の脅威を少しでも減らしたいから。けれども、そこに勝算があるかというと極めて微妙ですね。