感動して感動させた経験は、
どんな仕事でも生きる

 このお客さまの思い出を聞いたW君は、クルー仲間と相談し、このようなおもてなしを決めたという。

 後日このお手紙が寄せられ、社員たちも知るところとなったのだが、これはやはりななつ星という職場がW君に、仕事と感動についてよく考える機会を与えたのだろうと思う。

 W君はいま、ななつ星から異動となり、別の路線区でバリバリ日焼けしながら働いているが、ななつ星のような特別な空間でなくとも、「お客さまにどういった感動を届けられるかをつねに考えている」と、先日のオフ会で元気に話してくれた。

 このときのW君は、亡きご主人との思い出を語ったお客さまのお話に感動したから、そのお客さまを感動させることができたのだ。

 自分で感動できない人間は、ひとを感動させられない。
 仕事ができるひとは、感動できるひとだ。

 私はいつもそんなことを考えながら、「おっとっと、上司は安く感動してはいけない、うるさい客でなくてはいけないんだ」などとも思い返したりしながら、稟議の書類に目を通しているのである。

☆ps.
 今回、過去最高競争率が316倍となった「ななつ星」のDX(デラックス)スイート(7号車の最高客車)ほか、「ななつ星」の客車風景を公開しました。ななつ星の外観やプレミアムな内装の雰囲気など、ほんの少し覗いてみたい方は、ぜひ第1回連載記事を、10万PVに迫る勢いの大反響動画「祝!九州」に興味のある方は、第7回連載もあわせてご覧いただければと思います。