でも、看護師の配置がない軽度者向けのケアホームや認知症ユニットも備えている。そこで長く暮らし続けていれば、加齢に伴い、いずれ終末期を迎えることになる。といって、ナーシングホームの指定を受けた別のフロアや別の部屋に引っ越すことはしないという。長年居続けた生活空間を変えてしまうのは、認知症ケアの原則にも反するし、高齢者にとっては負担が重い。「Aging in Place」という高齢者ケアの考え方からも部屋は変わらない方がいい。

 ということは、最期まで同じ居室で住み続ける人が増えていけば、制度で部屋割りをすることが難しくなるのは当然だろう。実は、スコットランドでは、独自の法律を2001年に制定して、ケアホームとナーシングホームを区別しなくなっている。英国の中でも、認知症ケアなど福祉政策で先駆的な政策を打ち出しているのがスコットランド。さすがである。

ホスピスは建物の中が全てではない
地域の人を受け入れるのも役割

 英国の多くの施設では、入居者が高齢のため食が細りだして終末期が近づいたと判断されるとまず、その本人の家庭医(GP:General Practitioner)に相談する。全国民が近くの診療所のGPに登録しており、GPは総合医として内科や外科、皮膚科など全ての疾患を診療することになっている。そのGPが終末期であると確定診断すると、緩和ケアチームの出番である。

 施設内に緩和ケアチームがいればいいが、整備されていないと、近隣の病院に緩和ケアチームを要請する。派遣されてきた緩和ケアチームには、本人やその家族、施設の担当看護師、自治体のソーシャルワーカー、それにGPなどが加わって、「ACP:Advance Care Plan」(事前指示書)をチェックして必要な指示が出される。例えば、必要なモルヒネの量などが施設側に伝えられる。

 ACPは、施設入所の早い段階で本人を交えて関係者で作成する「死への取り決め」である。チューブでの栄養や蘇生法など、どのような治療を受けて、どこで、どのような状態で旅立ちたいかを記しておく。葬儀や遺書などにも言及される。

 病院ではなく、ホスピスが緩和ケアのスタッフを自宅に派遣することも広く行われている。