東京五輪開催時に予想されている、首都圏での交通機関の混雑問題。先日、東京大学に集結した産官学のキーマンたちは、この大問題への対策として、一体どんなことを話し合ったのだろうか?(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
五輪で予想される殺人的混雑を
IT技術で緩和できるか?
2020年東京オリンピック・パラリンピックで予想される交通機関の混雑問題をどう解決していくのか。9月25日に東京大学駒場第2キャンパスで開催された「第3回交通ジオメディアサミット」に、産官学のキーマンが集まった。
「東京2020の交通をITで支えるために」と題したこのシンポジウムに登場したのは、オリンピック組織委員会輸送局長の神田昌幸氏と交通輸送技術検討会座長である家田仁・政策研究大学院大学教授、そしてGoogle、ナビタイムジャパン、ジョルダン、ヴァル研究所といった乗り換え案内サービス事業者の面々だ。
「ジオメディア」とは、あまりなじみのない言葉かもしれないが、ジオグラフィック(地理)とメディアを組み合わせた造語で、GPSなどの位置情報を利用したサービスのことを指す。
既に私たちは、日常生活で当たり前のようにジオメディアを利用している。スマホで撮影した写真が撮影場所ごとに整理されるのも、周辺の店舗や施設を検索できるのも、さらには「ポケモンGO」のような現実世界を舞台にしたスマホゲームも、全てがジオメディアだ。
特に位置情報と親和性が高い交通の分野においては、カーナビや地図アプリ、乗り換え案内など、比較的早くからジオメディアが普及してきた。この取り組みをさらに進めることで、オリンピック・パラリンピック期間中の交通問題を解決しようというテーマである。
「コンパクト五輪」を掲げて招致したはずの東京五輪は、招致決定後に競技施設整備計画が大幅に変更され、レスリングやフェンシングは幕張メッセ、バスケットボールはさいたまスーパーアリーナ、ヨット競技(セーリング)は江ノ島で開催されることになった。ふたを開けてみれば、前回リオデジャネイロ大会よりも競技会場は広域化してしまったのである。当然、大会輸送の影響範囲も広範囲に及ぶことになる。
大会期間中、選手や役員など大会関係者はクルマ、観客1000万人は鉄道・バスなどの公共交通機関で輸送する計画だ。もし何の交通対策も行わなければ、五輪期間中の道路渋滞は普段の2倍、鉄道混雑は1割増という、深刻な混雑が発生すると試算されている。安全で円滑な大会輸送と都市活動を両立させるためには、一般の交通需要を一定程度抑制しなければならない。