米国リスクが高まる一方で、トヨタの中国ビジネスはさえない。中国販売では、独フォルクスワーゲンのみならず、日系のホンダ、日産自動車の後塵を拝している。トヨタ劣勢の理由として、1980年代に中国政府の現地化要請に応じなかった決断がいまだに尾を引いているとされてきた。

 現在、トヨタ社内では中国戦略を加速させる大号令が掛けられている。今年5月、李克強・中国首相が来日時にトヨタの生産拠点を視察したあたりから、中国での生産能力の拡張など、トヨタの中国シフトが鮮明になってきた。

 30年以上も事あるごとに中国政府に冷遇されてきたトヨタが、中国に恩を売る絶好の機会でもある。トヨタ幹部は、「米国が厳しいから中国へ行くわけではない」と、中国てこ入れと米中経済戦争との相関を否定するが、中国シフトが対米リスクのヘッジに働いていることは確かだ。

 そして、トヨタの中国大攻勢の“切り札”が今回の提携だった。ソフトバンクグループの投資先である中国のライドシェア、滴滴出行(DiDi)との協業に向けた布石となるからだ。

 年初に、車を造る会社からサービスも提供するモビリティー・カンパニーへ変わる宣言をしたトヨタ。豊田社長が「ドアを開けると必ず孫さんがいた」と言うように、米ウーバー・テクノロジーズ、シンガポールのグラブなどライドシェア領域の投資では、常にトヨタはソフトバンクに先を越されていた(下図参照)。中でも、中国政府との因縁から近づき難かった滴滴との関係構築は、トヨタにとって提携の大きな狙いになっている。また、ソフトバンクの目利き力や孫正義・ソフトバンクグループ会長兼社長のネットワークを頼りに、サービス領域の情報収集の精度を上げる目的もあるだろう。