SNS疲れ
「つくられた幸せでインスタ疲れ
本当の幸せは写真映えしない
日常の温かさの中に光っている」
これは、“お寺の掲示板界”で最も有名といっても過言ではない、京都市街にある真宗佛光寺派本山、佛光寺の標語です。掲示伝道に昔から力を入れていて、過去にこちらの掲示板の標語が話題を呼び、それらを集めた本が出版されたほどです。
佛光寺の標語はタイムリーな話題を頻繁に盛り込んでくるのですが、今回は写真共有アプリケーションのインスタグラム。昨年は「インスタ映え」という言葉が流行語になりましたね。
今回の掲示板大賞もそれらのツールを活用して募集をさせてもらっています。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)は、コミュニケーションを取る上で大変便利な半面、人々に苦しみや疲労をもたらしているのも事実です。最近では「SNS疲れ」という言葉も話題になっていますね。
この標語では、「いいね」をもらうために、リア充ぶりをアピールした写真などをあげることを「つくられた幸せ」と呼んでいます。若者を中心に利用者の多くが他人の評価に執着し、その執着心が心理的な疲労になっている点を突いています。
ありのままを見せればいいはずなのに、SNS上では幸せな姿や楽しい姿を演じなければならない。そして、SNS上の他者の幸せな姿と自分の姿を比較してしまう。そうなると、疲れるのは当然だと思います。
インスタグラムなどに載せられている写真にはリアルタイムな雰囲気がありますが、それらはすべて過去のものにすぎません。たとえ数秒前の写真だとしても、過去は過去です。周囲からどのような評価を得るのかが気になっているわけですから、過去や他者にとらわれて、いまへの集中が妨げられているのです。
SNS上にある過去ではなく、いまのリアルな輝きを探すことに集中してみませんか。
青色青光 黄色黄光
次の標語は東京のお寺のものです。
「黙って咲いて、黙って散る。花は人の評価を気にしない」
わたしたちは「いいね」の数など、他人の評価を気にしますが、花は人の評価を気にしません。『阿弥陀経』の中に、「青色青光(しょうしきしょうこう) 黄色黄光(おうしきおうこう) 赤色赤光(しゃくしきしゃっこう) 白色白光(びゃくしきびゃっこう)」というフレーズが出てきます。
これは浄土に咲く花の様子を表していて、そこに咲く花は周りを気にせず咲き誇っています。わたしたちも本来、一人ひとりが違う色を持ち、その色で輝くべき存在です。他の人との比較を離れて、それぞれのありのままの色で輝きたいものです。
(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)