また、みんなで決める場合、1人で決める場合とは異なり、自分だけの責任ではないため、各自の責任感が薄れてしまい、慎重さが失われるということもある。

 こうして見てくると、みんなで話し合って決めることは必ずしも望ましいわけではないことがわかるはずだ。

仕事で使える心理学本連載の著者・榎本博明さんの
『仕事で使える心理学』
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日本経済新聞出版社、860円(税別)
会議はみんなで話し合って
物事を決めていませんか?

みんなで話し合って決める行動は責任が分散されるため、危うさを伴うことが少なくありません。本書は会議をはじめ、部下指導、ビジネス交渉など、仕事で役立つテクニックと落とし穴を伝授します!

 そうはいっても、組織としての方針を決めるのに単独で決めるというのも責任が重すぎるし、特に日本的な組織ではみんなで決めるというのが習慣となっているため、話し合って決めるというスタイルを取らざるを得ない場面が少なくない。

 では、みんなで話し合って決める場合、どのようなことに留意すべきだろうか。

 例えば、失敗が許されない重大な案件について慎重に検討したいというケースがあるだろう。

 そのようなケースでは、各メンバー1人ひとりに前もって考えておくように伝える方法がある。あるいは、1人ひとりに思うことをメモさせ、それを事前に提出させる方法もある。なぜなら、その方が集団の場でいきなり考えるよりも、慎重な検討が行われることが期待できるからだ。

 逆に、守りの姿勢を打破すべく、積極策を大胆に模索したいというケースもある。この場合、リスキー・シフトの心理を利用し、ぶっつけ本番でみんなで話し合った方が責任の分散心理が働き、積極的な提案が出やすくなるだろう。

 みんなで話し合って判断するのを当然のことと思っている管理職も少なくないだろうが、そうした集団の中で作用しやすい心理的特性を踏まえて、会議の有効活用をしてほしい。