そして「付言」は、自分の来し方行く末に想いを馳せ、生き様を記したり、大切な人への気持ちを残したりする部分であり、あなたの思ったことを自由に表現できます。
「付言」には法的効力はないものの、遺言を読んだご家族や大切な方々が、あなたの最後の意思として尊重してくれる可能性が高いのです。
AIが「心」までも分析する
未来がやって来る
私は「付言」にこそ、遺言の本質があらわれると考えています。それは、自分の言葉で書く、あなたのアイデンティティそのものだからです。
将来、遺言作成にAIが関与した場合、果たして、この「付言」部分を書くことができるでしょうか。
例えば、日本一のベストセラー作家・夏目漱石の全著作をデータ入力し、文章の個性にタグをつけることによって、その文章技術のパターンを見つけ出せれば、AIが漱石の文章を書きうる可能性が十分にあります。これを「付言」に応用するのです。
確かに、個人の思考や嗜好に関するデータをコンピュータに入力し、学習させることによって、一定の「付言」の要素をアウトプットすることはできるでしょう。
でも、それでは、本当の「あなたらしさ」、いわゆる手触り感や想いの強さまでは書くことができません。それは「付言」が自分自身で紡ぎだす言葉だからです。
ただし、「あなたらしさ」もAIが表現できるようになる可能性があります。
AIには現時点で「心」にあたる機能がありませんが、その「心」についてのデータを解析できれば、AIが遺言の「本文」はもちろんのこと、「付言」についても形にすることができるようになるでしょう。