製造業の現場で労働者を多く雇用しなければならない産業が中心だった当時、こうした事故は日常茶飯事でした。ましてや、工場や建設現場で危険を伴う場合はなおさらです。

黒四ダム
『黒部の太陽』のエンディングでは、三船敏郎と石原裕次郎が完成した黒四ダムの前で難工事を振り返るシーンがある 写真は筆者提供

 そういえば、日本最大のダム「黒部第4ダム」の建設に至る苦労を描いた1968年公開の『黒部の太陽』でも、産業医とおぼしき医師が労働者に対し、建設現場に出ないよう勧める場面があります。労働衛生を通じて事故を減らすような安全対策が実施されるようになった背景は、まさにこうした点にあります。

労働衛生政策の
柱の1つは「健診」

 労働衛生の柱の1つとして、職場における健康診断を挙げることができます。皆さんも毎年、職場で健康診断を受けているかもしれませんが、実は制度的に2つに分かれています。1つが第11回(「メタボ健診の『笑えない』側面を明らかにするコメディ映画」)で取り上げた特定保健指導、通称「メタボ健診」で、2008年度から始まりました。

 もう1つが、労働安全衛生法に基づく健診です。以下、やはり吉永小百合が出演した青春映画『いつでも夢を』を取り上げましょう。

『いつでも夢を』
DVD発売中/¥4,700(税別)/発売:日活/販売:ハピネット/©1963日活

 これは、1962年にレコード大賞を受賞した同名の曲を映画化する形で、翌年に公開されました。先に触れた『風と樹と空と』とほぼ同じ時代になります。

 この映画で、吉永小百合は三原ひかるという看護師を演じており、普段は養父、泰山(信欣三)が経営する診療所「三原医院」で勤務しています。そして映画は冒頭、正午を知らせるサイレンとともに、「森田機械製作所」という工場の労働者たちが一斉に走っているシーンから始まります。

 彼らの目的は、泰山の診断を受けること。本館集合室に集まり、誰が最初に診察を受けるかもめています。しかし、彼らは健康や診察を気にしているのではなく、工場まで出向いたひかるを一目見たいがために全員、休憩になるや否や駆けてきたわけです。

 この後に映画では、ひかると岩下留次(橋幸夫)、ひかると同じ定時制高校に通う木村勝利(浜田光夫)、病弱な同級生の松本秋子(松原智恵子)を中心に、人間ドラマや恋愛模様が展開されます。