コミュニケーションは「投資」である

 もうひとつ、絶対に忘れてはならない重要なポイントがあります。
 マネジャーが途中経過をチェックするタイミングを必ず決めておくということです。
 どんなに事前にすり合わせをしていても、仕事を進める過程では必ず「ズレ」が生じます。また、大きめの仕事を頼んだ場合には、途方に暮れたメンバーが“塩漬け”にしてしまうこともよくあります。

 もしも、それがデッドライン直前にわかったら、たいへんです。マネジャーが引き取って“突貫工事”でやらざるをえなくなるかもしれませんし、期日に間に合わせることができなくなってしまうかもしれません。とはいえ、「抜き打ち」で途中経過をチェックしようとすると、メンバーに「信頼されていないのか?」と、不信感をもたせてしまうでしょう。

 そのようなことをふせぐためには、下図のように、最初の段階で、途中チェックのタイミングをメンバーと共有しておくことが不可欠です。

部下とのコミュニケーションを“効率化”すると、<br />確実に「生産性」は落ちる

 このように「初期設定」をしっかりやっておけば、安心してメンバーに仕事を任せることができます。メンバーも、迷わずフィニッシュに向けて仕事を進めることができるに違いありません。

「ずいぶん手間がかかるんだな……」と思われるかもしれませんが、マネジャーにとって、この手間は非常に重要な「投資」。マネジャーがメンバーにスムーズに仕事を渡せば、生産性が上がるのはもちろん、両者の間に信頼関係が生まれます。

 そして、スケジュールどおりに質の高い仕事を仕上げてくれたメンバーには、自然と笑顔で「ありがとう」と伝えることができるはずです。一見遠回りに見えても、そんな機会を一つずつ増やすことが、「関係の質」を高め、さらには「思考の質」も高める最も効果的な方法なのです。