すなわち、冒頭で紹介した新入社員の佐藤さんは、「専門的な知識」を学ぶ能力は身につけているのですが、活躍する人材になるために必要な「職業的な智恵」を身につける方法が分からないため、壁に突き当たってしまっているのです。
逆に、同期入社の鈴木さんは、その「職業的な智恵」を身につける方法を知っているため、「学歴」において佐藤さんに劣っていても、プロフェッショナルとして急速に成長しているのです。
相変わらず「工夫の無い会議」をする人に、決定的に足りないもの
では、その「職業的な智恵」を身につけるには、どうすれば良いのでしょうか。
そのために、まず最初に、佐藤さんが実行すべきことがあります。
それが、「学歴の壁」を越えるための「第1の技法」、
「経験」から掴んだ「智恵」の棚卸しをする
という「棚卸しの技法」です。
この技法は、これまでの日々の仕事で、自分が、どのような「職業的な智恵」を身につけてきたかを振り返るという技法ですが、「職業的な智恵」とは、高橋弁護士の例で言えば、「洞察力」や「説明力」、「判断力」や「交渉力」などのことです。さらには、「プレゼン力」や「会議力」、「企画力」や「営業力」などと呼ばれるものは、いずれも、この「職業的な智恵」です。
例えば、自分が会議を主宰することが多い立場ならば、自分の「会議力」を振り返り、自分がどの程度の「会議力」を身につけているかを「棚卸し」することです。
ただし、この「棚卸し」をするとき、2つの要点があります。
第1は、「一定期間の成長を振り返る」ということです。
分かりやすく言えば、「自分は、会議力が身についているか否か」という問いではなく、「自分の会議力は、この半年の間に、どの程度向上しただろうか」という問いを、自分に投げかけることです。
なぜなら、成長が止まる人というのは、ある程度、会議を運営できるようになると、「自分は、会議の運営はできる」と思い込み、実は、会議力というものには、奥深いスキルやノウハウの世界があることに気がついていないからです。
実際、職場を見渡すと、十年一日、工夫の無い会議の運営をしているマネジャーやリーダーは、決して少なくありません。リズム感良く会議を運営するスキルさえ身につけていない人も、残念ながら、珍しくありません。特に目につくのは、会議の運営とは、会議を「仕切る」ことだと思い込み、「シキラー会議」のスタイルを脱することのできないマネジャーやリーダーです。
同様に、「営業力」についても、「自分は、営業スキルは身につけた」と思い込み、顧客の立場や状況、人柄や心境に注意を払うことなく、マニュアル化した営業をする営業パーソンも、しばしば目につきます。いわゆる、「ワンパターン営業」のスタイルを脱することのできない営業パーソンです。
従って、「職業的な智恵」の棚卸しをするとき、必ず、一定の期間の成長を振り返り、例えば、「自分は、この半年の間に、どの程度、会議力が向上しただろうか」「この数か月、どの程度、営業力が伸びただろうか」と、自問自答することが極めて大切です。
第2は、「明確な課題意識を持って振り返る」ことです。