「つながりすぎた世界」が暴走する前に
私たちがなすべきこと

――さきほど、「正のフィードバック」が行きすぎるとマイナスの影響をもたらすとおっしゃいました。では、マイナスの影響を減速させる方法はないのでしょうか?

 ケースによって異なります。「高頻度取引」に対しては1%の200分の1、300分の1でも税金をかけるだけで、減速するでしょう。規制を設けることでそれは可能です。

――以前、ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)を開発しティム・バーナーズ=リー氏にインタビューしたとき、彼は「WWWがこれほど発達するとは予想もしていなかった」といっていました。

 当時はこんなことになるなどといったい何人の人が予想できたでしょうね。私はかつてインテル社でマイクロプロセッサを開発していましたが、年間で何十億個ものマイクロプロセッサが生産されることになるとは誰も予想していませんでした。

――最後に、読者へのアドバイスをお願いします。

 読者というよりも、政策立案者へのアドバイスをしたいと思います。

 まず、政策立案者は「正のフィードバック」について認識し、積極的に行動に出るべきです。

 たとえば、店頭デリバティブの想定元本が600兆ドルなどというのは、あまりにも度がすぎます。7年で60兆ドルから600兆ドルになったということは、年間40%の複利がついたようなものですから。こういった問題には早急に対応しなければなりません。

 考えてみれば、私たちは飛行機や原子力発電所を設計するときは長い時間をかけて安全装置についてあれこれ考え、いかにエラーを防ぐか真剣に考えます。それでも事故が起こるというのに、金融商品の設計となると短期間のうちに市場投入してしまい、安全装置についてあまり多くの時間を費やしません。

――飛行機や原子力発電所と違って、金融商品は実体がありませんからね。

 そのとおりです。しかし政策立案者には、その結果どういう事態が引き起こされうるのか、できるだけ真剣に考えてほしいものです。


【編集部からのお知らせ】

ウィリアム・ダビドウ著『つながりすぎた世界』好評発売中!!

インターネットが世界をつなげるほど<br />私たちの社会は脆くなるウィリアム・H・ダビドウ[著]
酒井泰介[訳]
定価:1,890円(税込)
四六判・並製・272頁 ISBN978-4-478-01521-6

「史上もっともつながり合う世界」を
私たちはどう生き抜くべきか
政治動乱、金融危機、個人情報流出……。
インターネットによりかつてなくつながり合った世界では、小さなきっかけが時に一国を揺るがす大問題へと発展する。
「便利さ」とひきかえに「脆さ」を露呈しつつあるこの社会を、私たちはどう生き抜けばよいのか。ネット時代を黎明期から知るシリコンバレーの重鎮が警鐘を鳴らす。

◆内容目次
第1章 蒸気機関に学ぶインターネットについての教訓
第2章 過剰結合と正のフィードバック
第3章 過剰結合―私たちを育み、くじくもの
第4章 増えつづける事故と思考感染
第5章 インターネットが生んだ“内なる幽霊”
第6章 インターネットの死角
第7章 アイスランドの金融危機〈1〉―漁業から金融へ
第8章 アイスランドの金融危機〈2〉―ネット銀行
第9章 正のフィードバックと金融バブル
第10章 サブプライム問題―インターネットが生んだ悲劇
第11章 変わりゆく産業の姿
第12章 盗まれるプライバシー
第13章 すべてはつながっている〈1〉―政治、産業、都市
第14章 すべてはつながっている〈2〉―送電、年金、神の見えざる手
第15章 ではどうする?〈1〉―ブレーキをかける
第16章 ではどうする?〈2〉―新たな環境に備えよ

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