アクセンチュア株がたったの1セントに?!

 さて、2010年5月6日にダウ平均株価が1000ポイント近く急落しました。いわゆる「フラッシュ・クラッシュ(瞬間暴落)」です。このときは数分のうちに700ポイントほど回復しましたが、フラッシュ・クラッシュが起こった要因はいくつかあります。

 ひとつは先行き不透明なギリシャ経済に対する懸念。もうひとつは、100万ドル単位の注文を10億ドル単位と間違えて出した誤発注だと当初いわれていましたが、これは後で嘘であることがわかりました。

 フラッシュ・クラッシュを引き起こした本当の要因は、カンザスのヘッジファンドであるワデル・アンド・リードによる空売りだったといわれています。このとき、市場は混乱し、「正のフィードバック」のプロセスが始まり、市場には売り注文が殺到したのです。

 混乱のさなかに、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)株は62ドルから56ドルに下落したため、NYSEのサーキットブレーカーが発動しました。しかし、電子取引システムにはその機能はありません。結局、同社の株価はいったん40ドルまで下落し、その日の終わりには60ドルまで回復しました。

 また、大手コンサルティング会社であるアクセンチュアの株も急落の憂き目にあいました。

 電子取引には「スタブ・クオート(stub quotes)」と呼ばれる値付け慣行があります。これは、株式市場のマーケットメーカーが市場実勢からいちじるしく乖離した呼び値、たとえば1株あたり1セントなどを提示することです。

 2010年5月6日の株価急落の事態を受けてトレーダーたちがいっせいに取引を手控えた結果、スタブ・クオートだけが市場に残り、それまで40ドル前後だったアクセンチュア株が、1株1セントで約定してしまったのです。すると、皆がいっせいにアクセンチュア株の売り注文を出して市場は混乱しました。結局、アクセンチュア株はその日の終わりには39ドルまで回復しましたが。

 このような例が、「つながりすぎ」によって引き起こされ、さらに「正のフィードバック」によって思考感染が助長された環境に見られる急激な変化です。