もしもEメールが有料だったら?
――「つながりすぎ」によるマイナスの影響を予測できたとして、その影響を相殺できるような戦略は存在すると思いますか?
マイナスの影響とは、多くの場合「テクノロジーのずれ」です。これまで、新聞と私たち読者とのつながりといえば、売店で買うか家に配達してもらうかのどちらかでした。そこへ突然、インターネットという新しい「つながり」が生まれました。インターネットが普及して以降、新聞社は苦戦を強いられており、その解決策は私にも思いつきません。
――多くの新聞社が倒産しましたね。
ええ。報道の中でもとりわけ重要な調査報道がかなり深刻な影響を受けていますし、同様の理由から、旅行代理店もたくさん倒産しました。競争に負けたともいえますが、新しいテクノロジーが出てきたことの影響は大きいでしょう。金融市場は以前と比べてはるかに不安定になりました。決してよい状況とは呼べません。
――あなたは『つながりすぎた世界』の中で、1988年にロバート・モリスが起こしたコンピュータウィルス事件に言及していますね。インターネットがなければこういう事件は起こりえませんが、この例も「意図しない結果」のひとつでしょうか?
そう思います。もうひとつ、わかりやすい例を挙げましょう。
Eメールは基本的にインターネットで無料といってもいいでしょう。これを無料にすることがどれだけ重要か、ありとあらゆる議論を聞いた覚えがあります。
しかし、もしEメールを有料にしておいたら、いまごろどれだけの人が感謝したことでしょうね。有料にすればスパムメールもこんなに大量には届かなかったでしょうし、コンピュータウィルスが蔓延するスピードももっと遅かったはずです。
無料にしたいという欲望は気高い欲望ですが、その結果、たくまずしてメールボックスが「悪い内容」で溢れかえる羽目になってしまいました。
――新しいテクノロジーが出てくると、必ずマイナスの「意図しない結果」が生じるものなのでしょうか?
新しいテクノロジーが出てきたからといって、必ずしもマイナスの影響が出てくるわけではありません。ただ、それを悪用すると間違いなくマイナスの影響が生じます。私が書いている「The Atlantic」のブログでは、さまざまな例を示しています。