優れたプロは、瞬間的に人格を切り替える
そして、それは、決して経営者だけではありません。どのような分野や職業であっても、優れたプロフェッショナルは、誰もが、自分の中に「様々な人格」を育て、身につけ、場面と状況によって使い分けています。
例えば、先日、私は、銀行の窓口に行って、少し煩雑な送金処理を依頼したのですが、その応対をした女性のベテラン銀行員は、見事なプロフェッショナルでした。
なぜなら、丁度そのとき、窓口では、新入行員への教育を兼ねて、このベテラン行員が、指導をしていたところだったからです。
そのため、最初、私の送金処理を担当したのは、その新入行員だったのですが、彼女の作業が手間取っているのを見ると、そのベテラン行員は、即座に、にこやかな笑顔で、私に、「いま、すぐに手続きを完了させますので」と言って、自分で端末の前に座り、手際よく処理を完了させました。しかし、その作業の要所では、新入行員に対して、少し厳しい雰囲気で、「この処理は、こうして行うのよ」と指導をしていました。そして、最後は、私に通帳を示し、その煩雑な送金処理について、「このようにご希望通り、送金されています」と丁寧に確認をしました。
これは、何気ない場面ですが、実は、このベテラン行員、プロフェッショナルとしての「人格の使い分け」を、見事に行っています。
まず、窓口での私に対する、にこやかな笑顔という「温かい人格」、新入行員に対して、しっかりとした指導をする「厳しい人格」、送金処理を正確に行い、私に丁寧に確認説明をする「几帳面な人格」。このベテラン行員は、その3つの人格を、見事に使い分けて仕事を進めていました。
このように、優れたプロフェッショナルは、例外なく、自分の中に「様々な人格」を育て、それを場面や状況に応じて、使い分けています。
「性格的に向いていない仕事」など存在しない
しかし、こう話を進めてくると、あなたは、少し戸惑いを感じるかもしれません。
「なぜ、自分の中に、様々な『人格』を育てなければならないのか。
自分の中に育てるべきは、様々な『才能』ではないのか」
その疑問です。
しかし、もし我々が、自分の中に眠る「才能」を開花させたいと思うならば、一つ、理解しておくべきことがあります。
「才能」とは「人格」である
そのことを、理解しておく必要があります。