五輪直前の国籍変更は
多重国籍を認める英国でも問題に

 ロンドンオリンピック開幕まで、あと70日あまりになったが、ここへきて五輪出場選手の国籍変更問題が話題になっている。

 話題のきっかけを作ったのは、いうまでもなくお笑い芸人の猫ひろしだ。猫が初マラソンを走ったのは4年前の東京マラソン。この時のタイムは3時間48分57秒で芸人の余技に過ぎなかったが、猛練習を積んだようでタイムをぐんぐん短縮。2年後の10年東京マラソンでは3時間を切るまでになった。

 五輪には参加標準記録があるが(男子マラソンの場合はB標準で2時間18分)、標準記録突破者がいない国・地域では男女1人ずつが出場できる特別ルールがある。こうした国の選手になれば猫の競技レベルでも五輪出場の可能性が出てくることから、国籍を移すプランが浮上。昨年10月にカンボジア国籍を取った。同等の記録を持つカンボジア選手との代表争いもあったが、今年3月の時点でわずかに上まわった猫が同国代表に決まった。

 ところが、この決定に国際陸連から待ったがかかる。近年、オイルマネーで潤う中東諸国がアフリカなどの有力選手を引き抜く事例が多くなっているため、国際陸連は安易な国籍変更を防ぐ新規定を設けた。国籍取得後1年が経過していない場合は、当該国での連続した1年間の居住実績があるか、もしくは国際陸連理事会による特例承認が必要というもの。猫のケースは特例として認められず、今回の五輪出場は消滅したのである。

 直前に国籍を変更した選手が代表になることの是非は五輪開催国の英国でも議論が起きている。英国はスポーツ先進国だが、中には自前の選手だけでは好成績が望めない競技もある。バレーボールやハンドボールなどだ。ホスト国のメンツもあり、それらの競技でも恥ずかしくない成績を収めたい。そのため他国からの帰化選手を大量に入れ、手っ取り早く強化しているわけだ。