前線からプレスをかける方法を巡り、秋田や本田と司令塔ビスマルクが忌憚なく意見をぶつけ合い、ピッチに険悪な空気が充満することは日常茶飯事。紅白戦で控え組が主力組を蹴散らすことも然り。鈴木はそうした光景を笑顔で歓迎した。チームがどんどん強くなる、と。

 しかし、日本サッカー界に訪れた潮流がアントラーズにも波及する。次の幹になる存在だったDF内田篤人、FW大迫勇也、MF柴崎岳らが次々にヨーロッパへ移籍。選手たちの意思を尊重し、一方でジレンマを抱えながらも、鈴木はアントラーズ独自の設計図を堅持してきた。

「小笠原と曽ヶ端の存在が伝統」
2人のレジェンドが若手と中堅を引っ張る

 そして今、米子北高校から加入して8年目のDF昌子源が、名実ともにリーダーとしての存在を築いた。J1年間王者と天皇杯の二冠を獲得した2016シーズン。著しい成長曲線を描き、日本代表でも存在感を増していた昌子はこんな言葉を残している。

「何が伝統かと言われたら、(小笠原)満男さんとソガさん(曽ヶ端)がいることが伝統なんじゃないかと。あの2人についていけば優勝できるんじゃないか、という背中を見せてくれる。いつまでも頼るわけにもいかんけど、本当にあの2人あってのアントラーズだと思うので」

 小笠原と曽ヶ端が39歳になった今シーズン。夏場にDF植田直通がベルギー、FW金崎夢生がサガン鳥栖へ新天地を求めた中でもAFCチャンピオンズリーグ(ACL)を勝ち抜き、必然的に過密日程となった終盤戦になって、2人のレジェンドが放つ希有な存在感が再びクローズアップされる。

 アントラーズは先月31日にセレッソ大阪との明治安田生命J1リーグ第31節を戦い、中2日の11月3日にはホームにペルセポリス(イラン)を迎えたACL決勝第1戦を2-0で快勝。再び中2日の同6日には、柏レイソルとの同第32節を戦っている。

 サッカーでは原則として試合翌日はクールダウンに、前日はセットプレーなどの確認にあてられる。中2日では追い込んだ練習ができなくなる中で、アントラーズはリーグ戦とACLで大幅にメンバーを入れ替えた。そして、リーグ戦で経験の乏しい若手や中堅を引っ張ったのが小笠原と曽ヶ端だった。

 小笠原はボランチとして2試合ともに先発フル出場。曽ヶ端もレイソル戦でゴールマウスを守った。主力を温存したアントラーズは雄々しく連勝をもぎ取り、暫定3位にまで順位を浮上させてきた。