では、「医療の非営利性」とは何なのでしょうか。この議論を突き詰めると、「営利性」「非営利性」の線引きは「株式会社か否か」という組織の違いだけになります。つまり、非営利性を掲げつつ、実態は経済採算性を重視している構造を持っていることになります。

 以上のような構造を考える素材として、『暖流』という日本映画を取り上げます。

18年の歳月を経ても
問題の構造は同じ

『暖流』は過去、計3作が作られており、ここではDVD化されている戦前の1939年版、1957年版を取り上げます。2つは概ね同じなので、最初にストーリーを確認しましょう。

 舞台は「志摩病院」という民間の病院。病院が経営危機に陥ったため、創業者の志摩泰英は日疋祐三という切れ者の若手実業家をアドバイザーに任じます。今でいうところの医療コンサルタントでしょうか。この前提自体が民間中心の提供体制、そして医療機関の経済採算性が重視されている様子を理解できます。

 そして、院長から全権委任された日疋は大胆な改革策を進めます。具体的には、経費のカット、親のすねをかじる長男で医師の泰彦の排除、外部からの人材登用などです。

 これに対し、旧来の医師や事務職員が反発。そこで、日疋は改革に対する反応を探るため、看護婦(現名称は看護師)の1人、石渡ぎんに対し、反対派の情報を集めるように命じます。その過程でぎんは日疋に恋愛感情を抱くようになり、泰秀の娘の啓子に恋愛感情を抱いていた日疋との間で三角関係となる中、泰秀が亡くなり、病院はドロドロした権力闘争の渦に入っていきます。

 2つの映画を見比べると、医療技術や社会情勢の変化に加え、ぎん(1939年版は水戸光子、1957年版は左幸子)のキャラクターが違うなど、いくつかの差異がありますが、大ざっぱにいうとこんなストーリーです。