経営陣や管理職は
認知的複雑性を高めているか?

 このような心理メカニズムをみると、企業などの派閥抗争や強引なワンマン経営にも似たような構図があることに気づくはずだ。ところが、国家運営で行われていることを企業でやろうとしても上手くいかない。

 なぜなら国家であれば、指導者の成し遂げようとする政策が実現せずに幻滅し、国民の気持ちが離れた場合、与野党が入れ替われば、それで済むのに対し、企業経営となると、そうはいかないからだ。

 従業員の不満が高まってきたからといって、他の企業の経営陣に乗り込んでもらって解決するというわけにはいかないし、そんなことはしたくないはずである。

 また、意見の合わない人、価値観の異なる人を排除するといったことを繰り返していたら、従業員の気持ちはついていかなくなり、生産性は低下する。

 そこで大切なのが、経営陣や管理職の認知的複雑性を高めることだ。

 白か黒かと単純化せず、味方と敵に二分することなく、物事にはいろんな見方があるということを前提とし、反対勢力の視点も取り込み、より複眼的に物事を見るように心がけなければならない。

 もし、意見の合わない人を排除すれば、組織の認知的複雑性を低下させ、組織風土の硬直化を招く。それは、従業員のモチベーションの低下を招くだけでなく、組織が行き詰まったり、不祥事の温床になったりしやすい。

 最近、組織の不祥事が次々に明るみに出てくるが、一連の不祥事の背景には、こうした認知的複雑性の低い組織ということがあるのではないか。

相手の認知的複雑性の程度によって
相手への接し方にも工夫が必要

 説得的コミュニケーションも、相手が認知的複雑性が高いか低いかで効果的な手法が異なってくる。

 例えば、ある商品やシステムを売り込むとしよう。この商品を買ったら、あるいはシステムを導入したらどんなに便利か、どれほど効率的になるかなど、メリットばかりを説明するのが一面的説得法である。

 それに対して、これらを利用した場合、こんな点で便利にはなるものの、コストはその分高くなる、非常に効率的になるが使い方に習熟するのに時間がかかるといったように、メリットばかりでなくデメリットも説明するのが両面的説得法である。

 どちらの方が効果的だろうか。それは相手によって違ってくる。一面的説得法の方が効果的な相手もいれば、両面的説得法の方が効果的な相手もいる。つまり相手の認知的複雑性の程度によって、効果的な手法が違うのだ。