政治・経済システムの戦い
イノベーション進める力が鍵に

 長期的には米中双方の政治・経済・社会のシステムの戦いが浮き彫りとなっていくのだろう。

 中国は、建国100周年にあたる2049年を念頭に「夢の実現」を目指している。米中の経済力の差は、今の米中の成長率の差を考えれば、今世紀中葉までの約30年間に縮小し、GDPに限れば、多くの人は2035年ごろには逆転するという。

 しかしそれが直ちに国力の差が逆転するということではない。米中に限ったことではないが、おそらくこれから国力を拡大していくのに最も重要な要素は、「イノベーション」だろう。

 単に技術革新だけをいうのではなく、社会全体が新しい意識で前に進んでいけるかどうかということだ。

 この点では、米国と中国はイノベーションが起こりやすい国ということはできる。

 米国の教育は圧倒的に競争的で、企業にも選ばれたエリートたちが新たな発想で革新的考えを持ち込んでいく。シリコンバレーの歴史を見れば明らかだ。

 IT・金融からAI・自動運転・IoTへと目まぐるしい変化を遂げている。米国は自由な市場が生み出す技術革新だ。

 中国の場合も、技術革新が進むだろうが、これはいわば上からの技術革新なのだろう。政府が主導し「中国製造2025」のように先端産業をターゲットにし、リソースを集中して革新につなげていく。

 共産党一党体制の下では既得権益の抵抗も容易に排除できる国なのだろう。技術革新に限ったわけではないが、米中は「民主主義下の市場資本主義」と「共産主義下の国家資本主義」の争いとなる。

 私は、この戦いでは、個人の自由と創造性が核となり、インセンティブが働いて技術革新を進めていく民主主義社会の勝利に終わるはずだと思う。

 人間社会では自由な個人の創造力がもたらす力は大きいからだ。

 ただ一方で、民主主義社会でも昨今の状況には不安を持たざるを得ない。

 政治指導者が「ポピュリズム」と「強権主義」に陥り、短期的な国民の歓心を買おうとするあまり、個人の自由と創造性に富んだ社会を窒息させてしまえば、未来は暗い。

(日本総合研究所国際戦略研究所理事長 田中 均)