とはいえ、先に述べたように、今回の産業革新機構の実質的な延長は十分な議論もなく実施された印象だ。しかも、そのトップの人選については、どのような経緯で選任されたのか、そして、2兆円という国の資金を運用するにふさわしい資産運用分野でのトラックレコードがあるのかを含め、国民の前に一切明らかにされていない。

 そのようなトップに国民の税金で高額な報酬を支払う根拠は乏しいと言わざるを得ない。

 民間の投資ファンドの場合、相応のトラックレコードがあるファンド運営者であっても、地を這いつくばるような苦労を重ねて投資家を回り、一生懸命納得を得る努力をして1件5億円、10億円という単位の資金を集める(ファンドレイジング)。そして、その後は、それら投資家と約束した利回りを実現するために全力を尽くし、結果が出なければ、信頼を失って次のファンドレイジングができなくなるという形で人生を失うリスクを抱えている。

 加えて、民間の投資ファンドの運営者は、投資家と同じ利害を共有するために、自らも手ガネをファンドに投入することが求められている。投資家に損失を与えたら自分も損をするという仕組みである。さらに、成功報酬が得られるのは、投資家に対して、「ハードルレート」と呼ばれる一定の利回りを付して資金を返した後であり、しかも、その後の案件で損失が出てハードルレートを下回れば、成功報酬は返還しなければならない(クローバック)。

 それに比べると、JICの幹部は、実質的に税金で賄われる2兆円もの資金で労せずしてファンドを作る一方、JICの幹部が手ガネを投入するわけでもない。現時点で確認できる限り、JICのファンドにはハードルレートもクローバックもなく、仮に投資に失敗しても何の痛みも感じることはない。まさに「ノーリスク・ハイリターン」だ。

 もし報酬だけ民間ファンド並みにと言うなら、都合よく「いいとこ取り」をするのではなく、以上のようなファンド運営のグローバルスタンダードを踏まえるべきであろう。

そもそも
JICは必要なのか

 翻って考えるに、そもそもJICは必要なのだろうか。確かにJICが雇おうとしている人材の中には有能な方もいると聞く。しかし、もし2兆円もの資金あるのなら、そういう人材が運営する民間のファンドに国がシードマネーをつけてあげれば済む話だ。