3Dアートは「錯視」を
楽しむためのもの

また、「3Dアート」と呼ばれるものは、メガネをかけないで、遠くを見る視線で「平行視」のまま目の前の絵を見る方法と、寄り目をして「交差視」のように目の前の絵を見る方法があります。この左右の画像を違えて見せて、その角度の違いを感じさせることで立体的に見せる脳の「錯覚」を利用したものです。ですから、「アート」と呼ぶのはいかがかと思います。これは大昔からある眼科生理現象での「錯視」なのです。

「3Dアート」の錯視作品集が出版されるようになったのはかなり昔だと思います。その頃は、単に面白い「錯覚」として読者は楽しんでいました。
ところが、最近この「3Dアート」を見て、近視や老眼が治る、視力が向上するなどとうたった本がかなり出ています。平行視を使った3Dアートは、遠くを見るのと同じ視線なので交差視よりは楽です。でももちろん近視や老眼が治るはずがありません。この「3Dアート」を作った方は純粋に「錯視」の面白い作品を作ろうとしたのだと思います。そこに、自称眼科医という方が「3Dアート」を見て視力が良くなる、などという胡散臭い本にして出版し始めました。「3Dアートが目を良くする」などと言えば、本が売れそうだから、というだけで企画された、人々を馬鹿にした本なんですよね。
「3Dアート」は左右で違うものを見るわけですから、目が疲れます。目が疲れるとは、毛様体筋の疲労が通常よりも強いことです。また左右違う画像をむりやり実際の映像として脳に錯覚させるわけですから、視神経も脳神経も通常よりかなり疲れます。結論としては、目が良くなるどころか、かえって目が悪くなる可能性が高いのです。少なくとも眼精疲労がひどくなるだけで、目の見え方や近視や老眼が良くなることなど絶対にないのです。
あくまでも「3Dアート」は本来の「錯視」を楽しむという目的に使うものです。これを、本を売りたいとの思惑で、全く間違った情報を本の中で伝えることは、「3Dアート」の価値さえも歪めて毀損するものです。

3D映画のしくみ