内閣府が「新財政健全化計画」策定に伴い今年7月に出した「中長期の経済財政に関する試算」では、プライマリーバランスの達成時期が従来の2025年から2027年に引き延ばされた。

 しかもそれだけでなく、試算はあちこちで“粉飾”が施された代物だ。

「試算」の数値とグラフは以下を参照していただきたい。
http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/minutes/2018/0709/shiryo_01.pdf

 もともとこの手のシミュレーションは恣意的ではある。経済成長率(GDP成長率)を高く設定し、金利を相対的に低く設定すれば、財政は健全化するようにできる。

 だが安倍政権で改定された計画はかなりひどい。

 健全化計画の前提になっている成長率や物価、金利などの見通しを詳しく見ると、名目経済成長率が来年2019年度に1.7%から2.8%に跳ね上がる一方で、名目長期金利はほぼ0%で推移し、21年度にようやく0.3%になる。

 消費者物価上昇率も2018年が1.1%で、19年度には1.5%、20年度には1.8%になる。21年度には1.9%と、政府が「2%物価目標」で掲げる水準にほぼなり、「デフレ脱却」が達成される。

 それを踏まえ、実質経済成長率は、1.5%前後から21年まで2%に上がっていって、そのままで推移する。

 これは、20年の東京オリンピックの後も現在の異常な金融緩和政策が続く中で、景気が上昇するというシナリオだ。だが、こんな楽観的なシナリオが成り立つだろうか。

 異次元緩和を柱にしたアベノミクスが5年半も続けられてきたが、それでも2%の物価上昇すらも実現できていない。それが、これから先の2~3年で経済が「正常化」するとはとても思えない。

 試算が発表された翌月に明らかにされた今年4―6月期の実質GDPの速報値は前期比年率でマイナス1.6%となった。3期ぶりのマイナス成長である。米中貿易戦争の影響で対中国輸出が減少し、災害などもあって個人消費が落ち込んだからだ。

 消費者物価上昇率についても、同時期に日銀が発表した展望レポートでは、19年の見通しは0.9%に引き下げられた。試算の1.5%を0.6%ポイントも下回る。

安倍政権の任期後に
急速に正常化が進む?

 奇妙なのは、アベノミクスの成果を政府がこれだけ強調していながら、安倍政権の任期が過ぎる2021年から急に日本経済が正常化して動くというシナリオになっていることだ。