軽減税率で
逆進性緩和の効果は疑問

 現在、軽減税率に関しては、外食やケータリングと食料品との区別、包装紙や容器はどうするか、食品と物品がセットになっている商品はどう扱うか、など扱いの不公平や手続きの煩雑さが問題になっている。

 だが、問題の本質はこうした実務上のことではない。食料品や生活必需品に軽減税率を設ける理由は、所得の低い者ほど負担が重いという「逆進性」への対処である。

 だが、そもそも軽減税率を導入すれば、逆進性が緩和されるのかどうか、その効果自体は疑わしい。

 実際、2010~11年にかけて、イギリスの有名な財政研究所(Institute of Fiscal studies)が発表した「マーリーズ・レビュー(Mirrlees Review)」では、食品や子ども服に関する付加価値税の軽減税率やゼロ税率は鈍い効果しかなく、廃止すべきだと提言した。

※Mirrlees ReviewはDimensions of Tax Design(2010)とTax by Design(2011)からなる。

 理由は2つ。1つは、ずっと低所得の人もいるが、若いときに低所得でも年齢が上がると所得が高くなる人もいる。生涯所得で見れば、ずっと逆進性が働く時期が続くとは限らず、所得再分配効果は低くなるという点だ。

 もう1つの理由は、高所得の人は高い食費を支払っており、高所得者ほど軽減税率やゼロ税率の効果が及ぶことである。

 それゆえ、「マーリーズレビュー」は軽減税率やゼロ税率を廃止し、その税収増加分で、失業手当や税額控除、あるいは低所得層への所得支援や住宅手当を行った方が、所得再分配効果が上がるとしている。

 この結論を活かすとすれば、効果が鈍い軽減税率やゼロ税率の導入は見送り、この分も含めて、消費増税の増収分は全額を社会保障や福祉に回すべきである。

 それがもともと、今回の消費増税を当時の民主、自民、公明が約束した「3党合意」の趣旨だったはずだ。

 ちなみに、一部の論者から、金融緩和をさらに行い、「貨幣発行益」で社会保障をまかなうというポピュリスト(大衆迎合)的な主張が語られているが、これもまともなやり方とは思えない。