サラリーマンや主婦、学生から事業会社まで──。株価が見る見るうちに上昇していった1980年代後半、「貯蓄から投資へ」のキャッチフレーズがいまだ実現しない昨今とは大違いで、多くの人々がバブルの熱狂に浮かれ、株式投資へ積極的に手を出していた。
だが、日経平均株価は89年の大納会(年間の最終売買日)に3万8915円87銭の史上最高値を付けた後、90年に入ると一気に急降下。多くの個人投資家が痛手を受け、失敗経験から投資と距離を置く風潮が今に続いている。
当時、バブル状態であったことは株価指標からも明白だったはずだ。何しろ、相場の割安・割高を見る上で参考となるPER(株価収益率)は15倍程度が目安とされるが、80年代後半のピーク時の日本企業では約60倍にも上り、明らかに過熱感が高まっていた。
にもかかわらず、当時は株価を実質的な純資産で割った「Qレシオ」なる新理論を持ち出してまで株価水準が正当化されるなど冷静に考えれば不可思議なことがまかり通っていた。相場経験の長いある関係者は「株高を正当化する理論が現れたら要注意」と警告する。