メンタルヘルスの問題は、多くの企業にとって、いまや解決すべき喫緊の課題となっている。
とりわけ、うつ病に関しては、“社内うつ”という言葉も取り沙汰されている。また、“心の風邪”とたとえられることもしばしばある。
確かに、うつ病は誰もが罹る可能性のある病であること、適切な治療を受けることによって改善することなどは、広く知られるようになった。だが一方で、“風邪”のように簡単に治癒するものではないことも事実と言える。まして、1人きりでの闘病には、困難がつきまとう。
そこで注目したいのが、ネット上で「認知行動療法」を提供してくれる「U2plus」(ユーツープラス)である。「認知行動療法」とは、「悩んでいる自分を一歩引いて眺めて、いつもと違うやり方や考え方を、いろいろと試してみる心理療法」のことだ(同サイトより)。
「U2plus」では、千葉大学社会精神保健教育研究センターの小堀修特任講師監修のもと、3種類に特化したプログラムを開発。軽度から中程度のうつ症状の「回復」に加えて、「予防」や「再発防止」を視野に入れたサービスを実施している。
「私自身、うつ病で療養中に、多くの人がうつ病に苦しんでいると知り、驚きました。これまで遠い存在だと思っていた病気が、実は見えていないだけで、広範囲に及んでいる。一方で、通院以外に、回復のために実践できる手段が乏しいことに悩んでいました。うつ病になると、移動自体が困難になります。そのため、リアルではなくインターネットを利用することで、全国のうつに悩む方に利用していただければと考えたのです」(U2plusの東藤泰宏代表)
「U2plus」の場合、用意されているプログラムは「FunCan」「U2サイクル」「コラム」の3つ(いずれも有料プランで利用可)。「FunCan」では、その日にできたことや楽しめたことを記述。「U2サイクル」は、落ち込む状況や、そのときの気分や体調の変化などを継続して記録することで、自分がうつに陥りがちなパターンを可視化してくれるものである。
最後の「コラム」では、何かつらいことがあったときに、その出来事に加えて、自分の考えたことや感情の種類(悲しい、イライラなど)を書き込んでいく。さらに、同じ状況に対して別の見方がないかを探す。別の考え方や見方が見つからないときは、過去の自分のコラムを振り返ってみたり、セラピストへ相談することも可能だ。
一般に「認知行動療法」を1人で継続していくのは、難しいとされる。「状況」「感情」「別の考え方」などの書き出しにつまづいたり、書き出していく過程で不安が甦る場合もあるからだ。
「U2plus」では、「仲間や専門家とともに自分を知り、うつとの付き合い方に気づき、楽しめることやできることを探していく」(同氏)ためのサポートを行なってくれる。孤独になりがちな作業を、ソーシャルの力を使って克服している点に、「U2plus」の特徴がある。
実際に、ユーザーへのヒアリングによれば、97%のユーザーが効果を感じているという。「より厳密な抑うつの効果測定も進めています」(同氏)とのことで、ネットを使った新しいうつ対策の試金石となりそうだ。
今後は、一般企業への提供も推し進めるとのことで、“社内うつ”対策に有効なプログラムとして、活用される日も近いかもしれない。うつに悩む人々に、多くの“プラス効果”を与えてくれることを期待したい。
(中島 駆/5時から作家塾(R))