膵臓がんに限らず、歯周病菌はすべてのがんのリスクを上げるとされています。これ歯周病菌とがんの関係が注目されている理由は、発がんの理論が変わったためです。20世紀まではウイルスはがん発症に関係しているが、細菌は関係していないというのが一般的な考えでした。ウイルスは人や動物の中に入り込まなければ増殖できない微生物で、細菌は自分の力で増殖できる微生物です。

 ところがピロリ菌と胃がんの関係の解明で、それが変わりました。ピロリ菌は細菌であり、その細菌が胃がんを発症させることが証明されたのです。これをもう少し詳しく説明すると、ピロリ菌に感染することで慢性炎症が起こり、胃の粘膜でDNAメチル化異常が誘発される。DNAメチル化とは、染色体内の化学反応のひとつで、その異常がDNAメチル化異常です。

 このDNAメチル化異常が胃の粘膜に蓄積すると、がんが起こりやすい状態となり、やがて胃がんが発生するのです。そしてこれと同じメカニズムが歯周病菌においても考えられています。歯周病菌が全身の臓器に血液で運ばれ、慢性炎症を引き起こす。それがDNAメチル化異常につながり、がん発症のリスクを上げるのです。

動脈硬化の要因にもなっていた!
認知症、糖尿病など関連疾患は多岐に

――生活習慣病との関係はどうでしょうか?

 例えば高血圧、脳血管疾患、心疾患などに関係していることがはっきりしています。

 これらの疾患で共通しているのが動脈硬化です。なぜ、歯周病菌が動脈硬化を進行させるのか? それは、歯周病菌のギンギバリス菌とギンギバリス菌が分泌する無数の外膜小胞(outer membrane vesicles (OMVs))に細胞侵入する性質があり、それによって動脈に慢性炎症が起こるからです。

 動脈の慢性炎症が起こると、血液中のLDLが動脈の内膜に入り込み、酸化して酸化LDLに変化します。これを処理するために白血球の一種も内膜へ入り込み、今度はマクロファージに変わります。マクロファージは酸化LDLを取り込んで泡沫細胞になり、炎症性物質を放出して動脈のあちこちで慢性炎症を誘発します。これらが引き金になって、動脈硬化が促進されるのです。